2011年 05月 26日
『心の音』(4)~知花さんのエッセイ
☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」
悲哀
『弱い』。そう思われたくないから、泣かないようにしています。
『でしゃばり』。そう思われたくないから、控えめに涙を流しています。
『可哀想』。そう思われたくないから、なにもなかったような顔を見せます。
外では絶対泣きません。その後が怖いから。
泣くなら一人で泣きたいです。どうしようもない悲しみに打ちひしがれて。
雨が降る下で泣きたいです。折れた雨傘片手に握って。
誰もいないところで泣きたいです。暗闇の中、光ったり消えたりを繰り返す柔な街灯を見つめながら。
どうしたら強くなれますか? 涙流さず生きられますか?
人を傷付けるのが嫌だから、自分自身を傷付けます。怖くないよ。痛くないよ。本当に痛い時は、ちゃんと言うから…。
我慢ばかりしていたせいで、涙の流し方を忘れました。
自己主張をやめてしまったせいで、人との接し方を忘れました。
自分の幸せを棄てたせいで、笑い方を忘れてしまいました…。
失った3つのもの。涙。愛。笑顔。
私が心を開かないから、誰も私を信じてくれない。私が誰かを愛さないから、誰も私を愛してくれない。
上辺だけの関係って、こういうことを言うの…?
どうしたらまた泣けますか? どうしたらまた人を愛せますか? どうしたらまた笑うことができるんですかー…?
…幸せになりたい。
いつか諦めた幸せを、もう一度求めていいですか? もう一度、あの頃のように笑っていいですか? 命を託せる人、見つけていいですかー…?
鍵を失くしたわたしを見捨てないで下さい。一緒に鍵を捜して下さい。それが無理ならせめて時間を下さい。猶予を与えて下さい。他に行く当てのないわたしは、ここにいるしかないから。
檻に閉じ込められたまま一生を生きるのは嫌です。後悔に苛まれて命を終えたくはありません。だから、ここから連れ出して下さい。檻の鍵を壊してでもいい。少しくらいならこの手に傷がついてもいい。わたしの伸ばす手を掴んで。早く来て。わたしを『悲哀』で終わらせないで。今すぐどこか遠くへ連れて行って…。
早く見つけたい。わたしの命。わたしが人生を懸けられるたったひとつの…。
いつになるか分からないけれど、どうか待っていて下さい。
冷たい雨が降り注ぐ。あとどれくらい待ったら救けに来てくれますか? 傘を差してくれますか?濡れる肩。震える身体を抱き締めてくれますか?
わたしなんてと思わないで下さい。わたしにはもう時間がない。残された最後の一人だから…。
…この鍵さえなくなれば…自由が手に入るのに…。
傷みなんか感じないよ。ほら、遠くに君が見える。今会いに行くから。
「待った?」
「ううん、待ってない。」
…ほんとはずっと待ってたの。どれだけ待たせたか分かってる?
言えない言葉を飲み込んだ。
東に向かうわたし達。今、小さくなった夕日が西に沈んだ。
THE END.
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」
悲哀
『弱い』。そう思われたくないから、泣かないようにしています。
『でしゃばり』。そう思われたくないから、控えめに涙を流しています。
『可哀想』。そう思われたくないから、なにもなかったような顔を見せます。
外では絶対泣きません。その後が怖いから。
泣くなら一人で泣きたいです。どうしようもない悲しみに打ちひしがれて。
雨が降る下で泣きたいです。折れた雨傘片手に握って。
誰もいないところで泣きたいです。暗闇の中、光ったり消えたりを繰り返す柔な街灯を見つめながら。
どうしたら強くなれますか? 涙流さず生きられますか?
人を傷付けるのが嫌だから、自分自身を傷付けます。怖くないよ。痛くないよ。本当に痛い時は、ちゃんと言うから…。
我慢ばかりしていたせいで、涙の流し方を忘れました。
自己主張をやめてしまったせいで、人との接し方を忘れました。
自分の幸せを棄てたせいで、笑い方を忘れてしまいました…。
失った3つのもの。涙。愛。笑顔。
私が心を開かないから、誰も私を信じてくれない。私が誰かを愛さないから、誰も私を愛してくれない。
上辺だけの関係って、こういうことを言うの…?
どうしたらまた泣けますか? どうしたらまた人を愛せますか? どうしたらまた笑うことができるんですかー…?
…幸せになりたい。
いつか諦めた幸せを、もう一度求めていいですか? もう一度、あの頃のように笑っていいですか? 命を託せる人、見つけていいですかー…?
鍵を失くしたわたしを見捨てないで下さい。一緒に鍵を捜して下さい。それが無理ならせめて時間を下さい。猶予を与えて下さい。他に行く当てのないわたしは、ここにいるしかないから。
檻に閉じ込められたまま一生を生きるのは嫌です。後悔に苛まれて命を終えたくはありません。だから、ここから連れ出して下さい。檻の鍵を壊してでもいい。少しくらいならこの手に傷がついてもいい。わたしの伸ばす手を掴んで。早く来て。わたしを『悲哀』で終わらせないで。今すぐどこか遠くへ連れて行って…。
早く見つけたい。わたしの命。わたしが人生を懸けられるたったひとつの…。
いつになるか分からないけれど、どうか待っていて下さい。
冷たい雨が降り注ぐ。あとどれくらい待ったら救けに来てくれますか? 傘を差してくれますか?濡れる肩。震える身体を抱き締めてくれますか?
わたしなんてと思わないで下さい。わたしにはもう時間がない。残された最後の一人だから…。
…この鍵さえなくなれば…自由が手に入るのに…。
傷みなんか感じないよ。ほら、遠くに君が見える。今会いに行くから。
「待った?」
「ううん、待ってない。」
…ほんとはずっと待ってたの。どれだけ待たせたか分かってる?
言えない言葉を飲み込んだ。
東に向かうわたし達。今、小さくなった夕日が西に沈んだ。
THE END.
by wck-news
| 2011-05-26 00:00
| 知花さんのエッセイ『心の音』