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九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響

加藤 直樹 / ころから



 1923年9月、東京で起きたジェノサイドの事実から目を逸らしてはならない、と思う。著者は、新大久保で生まれ育った。その新大久保でいまヘイトスピーチが繰り返されている。ヘイトスピーチとジェノサイドとの連続性を見つめた著者は、この本によって読者を90年前の事件現場へと導く。現場に立つと胸が痛み、同時に静かな怒りも湧いてくる。本のブックカバーの絵は、子どもたちが大震災のときの様子を書いたもので、虐殺の光景がクレヨンで描かれている。何人もの子どもが描いていて、差別・虐殺が「普通」だったことに驚き、心がざわつく。
 「朝鮮人を殺した日本人と、朝鮮人を守った日本人。その間にはどのような違いがあったのだろうか(略)ふだん、朝鮮人の誰かと人としての付き合いをもっている人の中から『守る人』が現れたということだ。(略)社会は、多くの人の結びつきの網の目でできている。そこには支配、抑圧、差別といった力が働く一方で、そうした力に歪められながらも、助け合うための結びつきも確かにあり、それこそが当たり前の日常を支えている(略)だが、虐殺者は、朝鮮人の個々の誰かであるものを『敵=朝鮮人』という記号に変えて『非人間』化し、それへの暴力を煽動する」(pp146-147)。国家的煽動と民衆の差別意識がコミュニティの「人間らしい関係性」を凌駕した瞬間、朝鮮人をターゲットとした虐殺は始まった。
 この危うさは今にもつながっている。近代国家は戦争とジェノサイドとともに成長してきた。近代国家に、へばりついている差別意識を根絶するのは困難だろう。しかし、日々の生活の中で名前をもつ人間同士の対等で思いやりのある関係性をつくりあげ、公権力の差別性やヘイトスピーチを糾すことはできるはずだ。
 
by WCK-News | 2014-07-13 00:00 | 本・映画・DVD

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