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カテゴリ:知花さんのエッセイ『心の音』( 14 )

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篭の鳥

どこに行くにも僕はいつもおいてけぼり。窮屈な部屋(おり)の中、薄汚れた羽を一切れひとさしちぎっていく。飛べない羽で冷えた体をごまかしていく。自分を殺している今を見て。ねぇ、本当に僕は生きているのかな…?

体のどこかが壊れてないと、いまいち生きてる感じがしない。気付けばいつもあちこちにあった痣とか切り傷とか火傷の痕とか、今になってそれがないと知り半狂乱に皮膚を掻きむしった。痛覚が鈍り腕を抓ってもなんら痛みは感じない。それでも生の実感が欲しかった。本来よりもキツくベルトを閉め、着座時には常に腕や足をペンで刺しておく。少しだけ痛いけど、それでも僕は生きてるよ。やっと痕がついた。よかった、僕は人形じゃない。
篭の鳥は閉ざされた空間から逃げ出し、新たな世界を望み羽ばたいた。けれど思っていたほど現実は甘くはなくて、過去に受けた傷の後遺症もひどかった。前を向くたび過去の足枷が邪魔をする。幸せになろうとするたびいつもそれを阻まれる。悪意とか殺意とか、目に見えなくてもそれは確かに存在する。そしてそれに侵された生き物の絶え間無い疑心…過度な防御と閉じた心。僕は未だ過去のショックで感情が薄い。依然僕の声は乾いてしまっている。十数年逃避旅行に行っていたせいで、現実を受け止めれないでいる。
“ニンゲン”という生物に逆らっちゃいけないんだ。それは何度も耳にしていたし、悟っている節もあった。唯一絶対ニンゲンが正しくて、僕はその隷属種で、だからもちろん反逆なんて以っての外。それでいいと思っていた。なぜならそれが僕の生きる意味だったから。

少し自分の評価が下がっただけで、自分は無意味と思い込んでしまう。ちょっとでも人の視線から外れると、好かれている気がしないと涙を流す。心が隙間で埋まっていく。いつの間にか“好き”まで篭の中に閉じ込められた。僕はもう自由なのに、もう篭はそこにはないはずなのに、今も僕の半身はそこに押し込められているようだ。

肉体的に人と繋がっている時以外の“愛してる”は信用しない。ニンゲンは嘘を吐く。ニンゲンは簡単に裏切る。大前提に、ニンゲンは僕のことを嫌っている。“愛してる”なんてただのお飾りで上辺だけの綺麗事だ。
愛してる
あいしてる
アイシテル
愛、してる?
恋、してる?
愛、してくれてる?
私は今、誰を“愛”してる?
ほら、信じられるのなんて自分だけだ。信頼も責任も僕だけのもの。それらすべてを自身に集約させれば、浅い絆なんて不必要に決まってる。僕は僕しか信じない。必要なのは強さではなく傷付かない心だ。僕はもう傷付くことをなによりも恐れてしまっている。心を閉じて他人を宇宙人と錯覚し、自分以外の全人類を除外した。無意識に脆い殻を作り上げ、ぬくぬくしたその中に潜り込む。拙い出来映えのそれを毎日保護して、帰る場所を“幻想”してる。うん、これでいい。これが正しい。だってこうすればなにも恐れなくて済むんだから…僕はこのままで間違ってない、よね?
きっと僕に確固とした自我があれば惑わされても平気なはず。それ以上に自負があれば惑わされることもないだろう。しかし僕にそれがあるとでも? 自我や自負は過去の自信が礎となり徐々に浮き出てくるものだ。こんな劣等感の塊にそんな高貴なものあるものか。
自身の凄惨な戯曲を実感するたび皮を剥いだ。悲しくなるたび腕を刺した。死にたいと思うたび、わざとぼんやりして車に轢かれるのを待っていた。

不動の精神さえ手に入れば、みんな僕を認めてくれるんじゃないかなぁ。もしかしたらもう傷付かなくて済むかもしれない。でもそれはどこにあるんだ? 果たして今の僕に見つけられるのか? 仮に見つけたとして…僕はその対象に拒否されないか? 「あんたみたいな弱虫にはまだ早い」って暗に拒絶されないか? そうしてしょぼくれて仮宿までとぼとぼ帰ってくるんだ。胸に開いた穴を無理矢理縫い付け、こっそり修繕施しながら。
分かってる。愛されたいだとかニンゲンが嫌いだって言いながら、そこに矛盾ばかり詰まっているということは。不動求ムと言いながら、自分自身が今では一番ぐらついてしまっているということなんて。だけどそんな不安定な僕が、こんな葛には一番お似合いだろう?

自分のことは嫌いじゃないけど、それを肯定する人はいない。だから過半数の意見を信じ、一般的な幸せを実感しようとした。これ以上ないと思っていた痛みが何度も体に突き刺さる。生々しい血が辺り一面に広がり小さな沼を作る。
意味が分からない。こんな努力さえ無視し、世間はやはり僕を嫌う。でも、健気に頑張る僕を自分で否定できるほど、僕の心は萎びてはいなかった。されど自分を肯定できる能力も言葉も持ち合わせてはいない。次第に心は冷たく凍っていった。

「会いたいよね? 君の飼い主にもう一目会いたいよね?」
ある時僕は、悪い顔をした飼い主の友人だという人物に捕まった。飼い主本人は僕を監禁して精神を喪失させたから、僕に近付くことは法的に禁止されている。彼は裁判に携わる人で、なんらかの権力を握っていたようだ。嫌がる僕にしつこく圧力をかけ僕は危うく心折れそうになった。唇噛んで睨みつけ、引っ切り無しに食いかかっても彼は諦めようとはしなかった。ならもうどうでもいいかなぁ…なんて本気で思ってみたりした。

まるで忠誠を誓う重しが今も首に乗っかかってるみたいだ。外せないよ。引っ張るとさらに首が締め付けられるし、切ろうとしたらそれは消えたように見せかける。重しがあるのが現実なのか、重しがあると思うこと自体幻覚なのか、潤んだ瞳が僕の視覚の邪魔をする。鏡に映った僕は死んだ涙で埋もれていた。自分の色が消えている。重しがあろうとなかろうと、僕の姿は鏡には映らない。存在否定されたらもう手遅れなんだ。でも、鏡には映らない僕は…本当は何色を映し出していたんだろう。
人の数だけ色があって、感情の数だけ色彩があって、笑顔の数だけ存在証明は煌めき踊る。僕が自ら放棄した心にはそんな付加価値が寄生していた。絶望的な悲しみには、もれなくそれを吹き飛ばすくらいのハッピーもついてくるらしい。そんなこととは露知らず、目の前の苦痛から逃れるべく僕はあっさり心臓を引きちぎった。もう一度チャンスがあっても、僕は心臓を投棄したのだろうか?

頑張ることに疲れたよ。僕はとうとう言ってしまった。それは単なる言い訳だ。息をして、他人に僕の存在を肯定してもらうためには頑張り続けることしかしちゃいけないのに。

僕はもう嫌なんだ。報われたくない絶望したい。頑張る理由を作るくらいならいっそ全部投げ出してリタイアしたい。サイコロを振って0が出たら飛び込もう。それが出たら飲み込もう。それが出たら吊られよう。それが出たら切り落とそう、飛び降りよう、殴られ野垂れ彷徨って…
そしてそれから死んじゃえばいい。
いや、でもね…
「ここから逃れることは、不可能だから(笑)」
クスクスクス、だってサイコロに0なんて存在しないのに。鈍く澄んだ愛嬌が軽く弾む。過去の私はひどく満足げに微笑んでいた。
疲れた。泣きたい泣けない泣ける場所もない。だって僕には実体がないのだから。それに、泣いているのは僕じゃなくて君の方だろう?
閉じ込めた僕の中に隠れていた本当の“私”。感情を閉ざした僕の中で、私はずっと消えない時間を過ごしていた。過去の同じあの日々を、繰り返し体験し嗚咽に悶えていた。
ここにいた僕は…きっと涙を流した私だったよ…。

嫌だよ私は君に守られてたい。外は怖い。剥き出しの心臓なんてすぐニンゲンに壊されちゃう。私には君という僕が必要だ。やっぱり傷付かない心が第一だ。でも私の中にあった偽者の僕は、泡となって消えてしまった。
終わりだ、もう生きられない。盾がないと次第に私は折れていくし枯れていく。呼吸さえできず、無意味に散っていくことしかできない。所詮篭の鳥は解放されたって飼い鳥なんだ。餌を与えられることしか知らず、自力で生きていくのは不可能なんだ。
でも最後に気付いたよ。これは篭の鳥が見つけた切ない最期の物語。
私はきっとガラクタになるために生まれたんだ。嬲られいびられ放置し廃棄され腐敗し熔かされ消えていくために。きっとそれが私の存在理由。じゃあ今からそれを証明しようか。核融合炉に飛び込んで、存在意義を見極めようか。

あの人から抜け出せても、心は永遠溶けないんだ…。

THE END.
by WCK-News | 2012-10-10 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』
妄想世界

名誉も栄光も経歴も過去も全部取っ払って、丸裸のわたし。こんなわたしになんの価値があると言うのですか?  どうしてあなたはそんなにわたしに優しくしてくれるのですか?  暖かさを知らないわたしは過剰に怯えてばかり。泣いて泣いて傷付けて泣いて、ああ終わらない。なんて嘆かわしい。

今 わたしにはなにもない。開いた手の平からサラサラこぼれ落ちてく真っ白い砂は、まるでそれを象徴しているかのようで…。


叶わないから 現実だから 不可能な世界 すべて嘘だから…
やだ そんな言葉でわたしを突き落とさないで。夢を見させて。今が春じゃないのなら、青い春でないのなら、私達はいつ思い描けばいいのですか?  幼き日に刻んだ夢を、誰に向かって語ることができるのですか…?


もしも未来が変えられるなら。定められた運命でなく 『わたし』を生きられるのなら。

たとえば明日世界が終わったら。仮にあの子になれるのなら。もしかわたしが死ぬのなら…

有り得ないようなことばかり妄想する世界。変わらない。終わらない。妄想世界は続いてく。
いずれわたしがいなくなっても生き絶えても、同じ思想の子孫が必ず現れる。せめて彼女達だけは笑ってられますように。絶望世界に打ちひしがれ、わたしのように自ら死を選ぶようなことだけは避けられますように。


どうか…誰か いつか幸せになれ。


さらさらさら…砂が手の平から流れてく。止まる気配もなくこぼれてく。その中にいるやもしれぬ後世の『わたし』に伝えます。

苦しみばかりのこの世界に いずれ打ち勝てと。戦え。血を流して奪い取れ。涙流して失えと。わたしは信じている。負けない。負けられない。譲れないものがあるから、絶対に強くなる。彼らは生き抜いてみせる!!


ああ これが地獄の妄想世界。
ひらひらはらはら 花びら蝶が舞うように。永続します 絶望世界。次々生まれ来る哀れな子供達。誰かがこの世界を終わらせてくれないかしら?  爆弾でも薬品でも…なんでもいい、今すぐ滅びろ。死んでくれ。


もう繰り返したくはない。この餓鬼達を。わたしはりんね。巡り苦しむ人々を輪に乗せ再びその世界へ送り込む地獄の番人。
いつまで続くのかなぁ こんな人生。未だ償えぬ過去に犯した深き大罪。これは本当に厳しい罰だ。早くわたしを殺して下さい。誰か幸せ掴んで下さい。この世界で笑顔を 永遠の花を咲かせてみせて…。


ふ…あはははは!
もう 死にたいよ…。

死んだはず 終わったはずの地獄の番人は、今尚崩壊した心を痛めながらわたし達をここに送り出している。彼女の意志に報いるためにも。今のわたし達にはなにができる?  What can we do now...?


バイバイ…


そうとは知らず、一人の少女が再びりんねと成り果てる。りんねの犯した大罪。自殺という許され難い行為は日々行われ、地獄の番人は消えることなく続いてく。
涙すら流せぬその世界で りんねはなにを願うのか…。


せめてわたし達だけは幸せに。笑顔でいようと思うのです。きっとそれが、数百数千年前の彼女が望んだささやかな願い。
分かるよね? 今のわたし達も、ただそれだけを求めて欲しているのだから。


『幸せに なりたかったよ…
誰か 幸せになって…』
今日も世界は終わらない。誰か聞こえるだろうか。彼女達の悲しみの嘆きと懺悔の声が。もし聞こえたのなら、天に向かって目一杯微笑んであげて下さい。そして、心からこの言葉を叫んで下さい。

『わたしは 幸せだよ!』
少なからず、あなたのその声に救われる魂があるのです。かく言う私もその世界から生まれ出て来ました。きっとどこかの誰かに救われた…。
そうやってこの地獄も少しずつ幸せを育んでいっているのです。小さき花にも実は実る。漆黒 暗黒の世界にも一筋の光。生まれてきてくれて ありがとう。


今やっと そう言うことができました。



THE END.
by WCK-News | 2012-04-29 21:05 | 知花さんのエッセイ『心の音』
楽園

死にたい…。


呟いた一言が、ぽたり雨になって流れ出した。
なにがいけないの? どうしてこうなるの? ぶつけられない怒りが収まらない。もう嫌だ。生きるのなんてもう嫌だ。人に会うたび傷付いて、誰にも会えずに傷付いて、胸の痛みが消え果てない。
もう解放して。その手から抜け出したい。それすら許されないのならば…

ねぇ、死ぬしかないでしょ?

悪魔がわたしに囁いた。これは天使? 楽になっていいという神様の御慈悲?
クスクス笑うその様はとても天使には見えない。
見たことのない無情の笑み。心ここにあらずの冷たい瞳。一目で分かった。ああ、この子は悪魔なんだな と。ただ人を傷付けにやってくるその非道且つ邪悪な存在は、わたしよりも遥かに幸せそうに笑っていた。なにより人を貶めることの快感を得るたび、そしてそれを自慢げにわたしに語るたびに彼または彼女の冷たすぎる青い瞳は瞬きを繰り返し幸せを表現していた。


わたしはなにも言わずに悪魔の言葉に耳を傾けていた。やがて悪魔の長い長い自慢話も終わりを迎えすべてが尽きるとそこは沈黙を貫くようになった。なにかネタを探す悪魔と無関心なわたしの心。どこか滑稽に思えてしまうのはやはりわたしが壊れてしまっているせいだろうか。

わたし達は、違っているようで似ているのかもね…。
ふとそう思った。


ああ、けどもうそんなことも…
今となってはどうでもいい。


わたしはなにも見なかった。こんな汚れた世界はお断りだというようにじっと目を閉じそこに在り続けた。
by WCK-News | 2012-04-29 00:03 | 知花さんのエッセイ『心の音』
孤独色

向こうにはどんな世界が広がってるんだろう…。分からない。分からない。ワカラナイ…。

世界の色は、孤独色。わたしの色は、ただただ孤独を感じさせて…。
孤独を抱く女は、いまでたっても孤独だ。依然と、あるがままを見ることができず、小さな世界に在り続ける。この世で最も悲しい存在だ。なにが彼女をそうさせたのか。運命ですら彼女を拒んだ。彼女が愛するモノは、枯れ、腐り、そして朽ちる。片隅にひっそり咲く存在感の薄めな薔薇を手に取っても、それはすぐに見慣れた色へと変わる。

ほら…ね?
一寸と保たず褪せていくんだ…。渋い色に変わる原型崩れる浅はかな薔薇。
殊勝なわたしは重なるこの苦しい現実に耐えられぬ。不動の痛みを生む棘ですら彼女との接触を頑なに拒んだ。


「嘘吐き」
結局彼女は変われなかった。その悲しい色に彩られた闇を受け入れることができなかったのだ。

「わたしの声は、届かない」
真実はいつだって届かないもので、それが世間での唯一の真実。
「ほら…孤独の色が見える。あなたもわたしと同じなの? 聞こえるよ。誰に盗られてしまったの? …逃げないで。…ねぇ。その薔薇、綺麗な朱色ね。どうしてそんな風に保ってられるの? 羨ましい。狂おしい。…もうすぐあなたも堕ちるはず。絶望の果てに訪れる悲しき血色の最期のように。この手に握る薔薇のように。儚い夢が、じきに醒める。…さよなら。私達、きっとまた会えるわね」
…絶望に堕ちた者同士。私達は歪んだだ同志。否定され続けた悪しき魂。それは、いつでも惹かれ合うから。いつの時代でも。


…孤独色って知ってる? この世の真実。世界を赤黒く染める、切なく侘(わび)しい世界で一番拒まれる色なのよ。
そこは、終わりの世界。すべてに嫌われ、拒まれた人々が集う場所。終わりを迎えた人々が集まる場所。されど、その場所が終わることは絶対に有り得ない…。

THE END.
by WCK-News | 2012-04-29 00:02 | 知花さんのエッセイ『心の音』
Anniversary

あのね、今日ね、すっごくいいことあったんだ!
頬を赤く染め全速力で走り切れた息を整えながら子供は、必死に話し出す。「ねぇ聞いてよ。それでね、あとね」急いでよく回らない呂律に悩まされながら喋ろうとするこの子の姿がかわいくて、「落ち着いて」と言おうと思ったけれど真剣に大きく口を開けて、外での楽しい出来事を微笑みながら聞いてしまいました。
遠足で○○ちゃんとおっきな滑り台で遊んだの。蝉の抜け殻見つけたんだ。拾った落ち葉で焼き芋したい! いとこのお姉ちゃんと雪だるま作ってきたよ。来年は雪合戦もしたいな♪
先生に褒められたテストでいい点とった。でも昨日怖い夢見ちゃったんだ…。
怯えて泣きべそかいて見上げる私の顔。遠い昔の自分を思い起こしながら私は彼女に囁いた。
「大丈夫…お母さんがいるから、安心してゆっくりお休みなさい」


転んだひざ小僧さんが泣いてるよ。痛いの痛いの飛んでけ~! って声掛けた。そしたらちょっぴり元気になった。そうだママ見て!  ほらお口の奥のお箸持つ方!  学校で歯が抜けたんだよ!  先生がおめでとうって言ってこの袋にいれてくれたの!

この子が泣かずに過ごせればいいのに。二度と苦しまなくてもいい安心できる明日ならいいのに。他の子はどうなったって構わないから、この子だけは不幸に苛まれなければいいのに…。
これからこの子の将来には一体どんな人生が待ち受けているのでしょう。泣き虫なこの子が泣かずに過ごせる未来は果たして存在するのでしょうか。広がる笑顔を隠さなくてもいいのでしょうか。私も共に笑っていていいのでしょうか…。

…お母さん?
ほら、あの子が泣いてます。不安がるあなたの心情を察知し心配そうにあなたの涙を見つめています。
泣かないで。声にならない声で子供が涙を堪えて水滴を拭き取っていきます。代わりにわたしが苦しむから。僕が一緒に泣いてあげるから。
ありがとう、伝えなくちゃならないね。ここまで成長してくれたかわいい我が子へ。今まで何一つ障害がなかったわけではないけれど、それでも幼いながらに悩み苦しんで立ち上がり生き抜いたこの愛らしい子へ。


おかえり、ただいま、行ってきます。
行ってらっしゃい、希望の光。私達の新たな未来。生まれ来る無垢な命へ おめでとう ありがとう 綺麗な言葉をその手に篭めて。
生まれてきてくれて、ありがとうー…。
そしてわたしを一番に抱いてくれたお母さん、いっぱい頑張ってくれてありがとう。これからたくさん迷惑かけます。時には背負わなくていい苦労を身に覚えのない迷惑を被ることもあるでしょう。わたしが成長してもまだまだ不安は健在でしょう。この小さかった身体はいつの間にかこんなに大きくなりました。


たった一つの奇跡と運命。確実な軌跡はいつか四季彩の人生を存分に色付かせるでしょう。涙を殺して見上げた夜空も、声を潜めて壊れた時計にした相談もいつかのための幸せの貯金。
花粉に苦しみ強がる秋も、寒さに震えて負けそうな冬も、もう大丈夫。春になったら桜が咲いて桃色の甘い香りが私達に微笑むでしょう。夏になったら海にキャンプにスイカに花火。いっぱいいっぱい遊ぼうね。夏休み明け、誰よりも眩しく日焼けの跡が映えるように。始まったばかりの人生には、たくさんの目映い想い出が待ち受けているから。そして決して簡単ではない困難を進む毎に、目まぐるしい明るい変化と輝かしい笑顔の両方が洞窟のあちこちに鏤(ちりば)められているはずだから。
今日は記念日。あなたが生まれた記念すべき麗しい日。あと何度このおめでたい生誕の日に立ち会えるかな?  大きくなったら家族のことなんかそっちのけ、友達との約束事に忙しくて私達のことは忘れちゃうかな? 忘れないでね。いつでもあなたが一番だよ。いつだってあなたが大好き。おめでとう。将来の分も含めて今日はいっぱい祝いたい。数え切れない“愛してる”を笑顔に変えて。幸福の鐘が鳴る。祝福を歌う音に跳ねる小鳥の鮮やかなダンス。ベビーカーの中からでも元気よく鳥に反応し楽しそうに笑いはしゃぐ姿を見ているうちに、生まれてきてよかった と思わず感謝していたら、ふいに家族への想いが溢れてきました。



THE END.
by WCK-News | 2012-04-29 00:01 | 知花さんのエッセイ『心の音』
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Happy Birthday

私にとってなんでもないこの日が、君にとっては特別な日かもしれない。
これは、そんな君に捧げる愛の詩集ですー。

おめでとう。君の出生を、君が無事に生まれることを望んだ人が、どれほどいることでしょう。君に出会えたことを喜ぶ人がどれほどいることでしょう。

こんな広い世の中で君に逢えたこと。それこそ奇跡。

でも、君だけじゃないね。人口の数だけそんな奇跡がある。

おめでとう。君が生まれてくれたこと、心から祝福します。そして、感謝します。君をこの世に連れて来てくれたお二人に。
ありがとう。幸せです。

君と私も、いつか出会えたらいいね。

Happy birthday!


また出逢いましょうね。


今日が良い日になりますように。
by WCK-News | 2012-04-29 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』
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藍色の瞳

藍色の瞳。あの子が笑う。だから、わたしは生きている。偽善者と呼ばれようと、あの子が生きている限りわたしはあの子の影となる。それが、わたしがあの子にできる唯一の恩返し。あなたを一生かけてお守りします。命に代えても。…今此処でお誓い申し上げます。

良い子じゃないです。良い子なら、嫉妬したりなんかしません。恨んだりしません。憎んだりしません。あんなに相手を責めたりしません。

表面上のわたしを見て、良い子だと思ったのなら、それは勘違いです。忘れて下さい。

本当のわたしは悪い子です。差し伸べられた手を振り払い、それどころかその行為を無駄にするように全否定。もう一度あの日に戻れたら…。
どうぞ地獄に奈落、どこへでも。

誉めないで。どうしていいか分からなくなる。また調子に乗ってしまう。
馬鹿みたい。いや、馬鹿だ。嬉しいのに素直に喜べなくて、そんなところ見せたくなくて。

…理由なんかあるのかな。

前は、どうしてたんだろ…。

誰も悪くない。悪いのは、みんなわたし。ごめんなさい。弱くてごめんなさい。頼ってばかりでごめんなさい。ひとりでいられなくてごめんなさい。ごめんなさい…。

この手に浮かぶ無数の傷痕。これは、勲章ですか? それともただの自分虐(いじ)め?

陰口叩かれる日々に疲れ、もうどこかへ行ってしまいたい。

こんなに広い世界なのに、どこへ行っても人はみんな悪口ばかり。みんな同じに見えてきました。
…ここが嫌になっても死ぬる勇気さえなく、ずるずると生きてきました。
ねぇ、在りし日のわたし。幸せってなんなんだろうね。あの時のあなたは幸せでしたか? 今は幸せですか?

あの頃は幸せとかよく分からなくて、でもそうじゃないとは言えなくて、だから笑顔で頷いてました。考える暇などなく。
幸せじゃないなんて言ったら、それまでの自分とか下手したら家族までも否定してしまうような気がして言えませんでした。
余計なことばかり考えて、一番欲しいものからはずっと目を逸らしてます。どうでもいいことに一生懸命で、あなたはいつも後回し。…ごめんね。
わたしには、一生『幸せ』が分からないような気がします。

ねぇ。勝手な妄想ばかりしないで。変に膨らませたりしないで。傷は消えても実はまだ隠れてるんです。見えない痛み、残ってるんです。

『もう大丈夫』。
決め付けないで。まだ平気じゃない。怖くてたまらない。あなたに見せてるわたしだけがすべてじゃない。あなたの中のわたしは、そんな小さいものですか。

まだまだ。こんなところで終わりたくない。負け犬人生なんて願い下げ。

わたしが守ったのは、この誇り。いつも完璧でいると言う守れない誓い。無駄なくらい堅い覚悟。
残すは、何度も砕かれたこの自尊心。
笑顔でいられる為にすべてを押し付け、大切なモノすら預け、還ることを拒まれ、今手元に在るのはこのちっぽけなプライドのみ…。

今度破られたら本当に終わってしまうような気がするから。
だから、いつも以上にふたをする。心とか感情を見えないようにして、嘘で飾った言葉を吐(は)く。…美しい嘘を吐(つ)く。

まだ見えてないもの、あるんじゃないの?

それで満足なんですか? 構いませんけど。わたしはそんなに小さくないです。あなたの考えるほど弱いものじゃないです。

あれ…?

なんだか怖くなってきました。ごめんなさい。わたし、逃げていいですか? 自己保身してもいいですか?

一度考えました。人を信じてみようかなって。だけど、やっぱり無理のようです。いじけてるわけじゃない。自分の力量を読み間違えていたんです。ただの勘違い。場違いな間違い。

一見仲良く見えても皮を剥(は)がせば言いたい放題。

ひとりが怖いと言いながら、ひとりになって安心しているわたしがいます。矛盾しているわたしです。でも、どっちも本当なんです。

どうしよう。泣きそう…。

捨てたはずの殻。また覆(おお)いたくなりました。閉じ込もりたいです。人間界は、怖いです。偽善者ばかり。嘘ばっかり。嘘を吐くならなにもしないでよ。できないこと言わないでよ。救うなんて嘘、ひどすぎるよ…。

わたしが悪かった? ちゃんと言ってたらよかった? そうしたらどうなってた? 今ほど居づらい場所じゃなかった?
でも、もう遅いじゃないですか。もう手遅れなんでしょ? 分かってるよ…。

責めないで下さい。死ぬほど後悔してますから。

もう誰も、疑いたくないよ…。

嫉妬したくない。誰も憎みたくない。嫌うのって、疲れるんです。憎悪って、たくさんエネルギー盗(と)られるんです。
知ってますか? わたしはもう、人間じゃない。人間のふりをした、人間になろうとしていたモノ。

できなかった。わたしがなりたかったのは、こんなんじゃない。こんな最低最悪な存在じゃない。こんな汚れた世界で生きているモノじゃなかった…。

わたしが求めたのは、もっと綺麗で美しくて、人間らしいモノ。そうありたかった。完璧でいたかった。そうすれば、わたしがそこにいてもいい気がして…。

もはや、求めることすら許されませんか…。

心境の変化。
いつから? 自分勝手、自己中心的。なにがどうしてこうなりましたか。いいえ、それとも元からわたしはこんな人間だったのでしょうか…。

一番大切なのは、自分。大事な自分の為、自分を守る為。

相手を傷つける。

『誰かを守りたい。』

そう言って剣を手に取り闘いを挑んだ。

誰よりも大切なあの子の為。誰よりも好きで嫌いなあの子。憎くて羨ましくてずるくて優しくて。
…一番愛しい。

そんなあの子は今も笑顔。誰からも愛されるけれど、彼女の世界に真実はない。

涙流しすぎ、いつしかあの子は藍色の瞳。

本当に綺麗な目だったのに。なにもかも見透かすほど透明な輝きを放っていたのに。

「生涯あなたをお守りします。」

わたしの言葉に、彼女は優しく微笑んだ。それは、悲痛なまでに美しい笑顔。

嘘だと知っていながら、その人を許し、ただ温かい笑顔を向けてくれる。それが彼女の…藍色の瞳を持つ少女の最後の優しさ。

わたしは、あなたすら守れなくて、あなたを藍色に染めてしまった。それだけじゃない。わたしの弱さのせいであなたを血色に塗り替え、その上からまたあなたを傷つけ、今尚許しを請うている…。

あの子を守る。だから、あわよくばついでにわたしも…。

半端な覚悟。本当に大切なモノを見捨て、嘘で飾られたモノを必死に守ろうとする。美しく悲しい忠誠心。

…ねぇ。…それでいいの…?

それは本当は誰も守れていない。残されたプライドも藍色の瞳も。そこにはもう冷たい涙と暗い嘘。

最後の砦には、もう誰もいません…。

わたしが見たかった世界。振り返ってももうなにも残ってなくて、跡に残るは荒れ果てた廃墟と荒(すさ)んだ心。そして、藍色の瞳。

この闘いで、誰が得をしたのですか…?

その人は、わたし達を駒にしたのですか…?

使い道がなくなった駒は、廃棄されるんですか…?

あの子はどこ? いつか出会える? 今生、この世で会えますか? ゴミ箱ででも会えますか?

…ならいっそ、棄てて下さい…。

最後にあの子に会いたい…。

まだなにも伝えられてないよ…。

次会えたら今度は必ず言う。もう会えないかもしれないから。ずいぶん遠回りしてきたけど、これがわたしの本当の気持ち。あの子に一度も言ってなかった。

ねぇ。今泣いているの? 藍色の瞳を瞬(まばた)かせているの?
いつものように笑ってよ。大丈夫って言ってよ。そうしたら、絶対に言うから。最初で最後の大告白。君に届くように伝えます。声を振り絞って、遠くを見るその藍色の瞳にも映るように。

大好き って。

あいたいよ…。

今どこにいるの?誰と居るの? なにしてるの? あなたの笑顔は誰に向けられているの? わたしは誰の為に生きたらいいの…?

「…  …!」

この声が、遥か遠くに居るあなたに届くように。
永年の責務から解放されました。あなたもわたしももう無関係。どこかで息をするあなたが、ただ穏やかに過ごせますように。息を殺すような生き方は、もうして欲しくない。少しでも、報われますように。涙を流した以上の笑顔がこぼれますように。

自由に空を飛び交うあの小鳥達。あんな風に、楽しそうに地を駈けるあの子供達のように。川から海へ流れる小さな泡のように。
…太陽のような明るい笑顔を向けているあの子のように。

「…  …!」


THE END
by wck-news | 2011-08-10 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』
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第一部 悲愴

『余計なお世話』。
君が私の為にしてくれること、言ってくれること。私にとっては無意味な行動。君がなにをしてくれたってどうせ私は変われないんだから。いつもそうだったんだから。どんなに強く願っても私は同じだったんだから。…願うほどに辛くなる。

ねぇ、どうして? 逃げてばかり。いじけて身を滅ぼすばかり。
自分で足下崩してるの。自分からそうしてるの。

止まらない唇。終わらない怒り。収まらない心。続く悲しみー…。

なにが好きでなにが嫌い? それすらも分からない。それさえも。…新しい記憶が存在しないから。

羨ましい。憎い。ずるい。悔しい。ひどい。恨めしい。私もなりたい。負けたくない。嫌だ。イヤダ…。

怖い。弱い。嫌い。痛い。脆い。切ない。悲しい。苦しい。寂しい。虚しい。冷たい。辛い。寒い。ひどい。泣きたい。

呻(うめ)き声、何度あげたかな? 君に何度も救いを求めてたよ。遠くなる君。100%無理だと分かっていたけど、繰り返し君の名前を呼んだよ。君が行ってから…血を吐いても叫んでたんだよ。倒れるまで。意識を失うまで君を求めていた。

なのに…

裏切り者。偽善者。弱虫。負け犬。

この心はなに? 憎いの? 悲しいの? 辛いの? 寂しいの?

もう自分がワカラナイ…。

答え。事実。正解。嘘。
なにが本当でなにが偽り? なにが事実でなにが誤り? 答えってなに? 君は真実? 私は嘘?

なにも信じたくない…。

酬(むく)い。罪。罰。

怒り。

怒りは次第に悲しみに変わっていき、やがて無になった。

こんな世界が嫌だと言うのなら、さあ閉じ込もりましょう。膝を抱えて小さな場所でうずくまり、俯いて。『救け』なんて来ない。私が一番よく知ってる。ちゃんと生きてる人は、自分の道を進むのに必死だから。
…進むのやめたくせに救い求めるの? 生きるの諦めたくせに死なないの? 消えろと願ったのに消えないの…?

もう嫌。私達、矛盾だらけじゃないですか。こんなところじゃろくな人間になれやしない。

私と世界、恨みませんか? たくさんの人、傷付けませんか? こんな世の中に、救いをくれないこの社会に、子供ながらの反抗を、小さく抵抗してみませんか…?

叫びましょう。喚きましょう。抗いましょう。争いましょう。逆らいましょう。
…闘いましょう…。

寒くても、感じません。誰のせいでしょうね。
生きること、どうでもいいです。誰がそうさせたんでしょうね。
幸せとか、興味ないです。どうせ分からないし。

もう消えたいです。しんどいです。疲れました…。

散りましょう。枯れましょう。摘みましょう。萎(しぼ)みましょう。朽ちましょう。果てましょう。砕けましょう。壊れましょう。崩れましょう。滅びましょう。…もう消えましょう?

未だに生きる人々を、死にきれない思いを乗せて、死に損ないの人間達を、嘲笑(あざわら)いましょう。せせら笑いましょう。

嘲笑、しましょ?
なんておかしい。なんて笑える。なんて無情なこの世界…。

一番おかしいのは、わたし自身…。

ごめんね。すみません。申し訳ない。お詫び申し上げます。
懺悔しきれない罪。変わることのないこの想い。背負いきれない私の重み。
はぁ。重いなぁ。手伝って欲しいなぁ。励まして欲しいなぁ。…信じて欲しかったなぁ…。

THE END


第二部 あかり


見えない。聞こえない。分からない。
逃げたい。いなくなりたい。消えたい。死にたい。

殺して。私の為に人生捨てないで。
嫌って。これ以上高まる感情を抑えきれない。
離して。明日になったら忘れられるから。忘れるから。
…また世界を恨みますから…。

私が知っているのは、独りぼっちの世界。それだけ。闇に染まった悪だけ。だから、知りたくなかった。こんな君の、無条件の愛なんか…。

私のすべてを知っていながら遠ざかってくれない。
そんな人は初めてだったから…。

そんな君に、戸惑い、恐(おそ)れ、怯え、そして…

涙した。

受け入れてくれた。私を嫌わなかった。拒まなかった。

嘘だらけの世界。正義なんて消え去って、みんな自分に一直線。
真実の世界。“はじまり”の時には在った? 清き真実。なにもかもがなくてすべてがこれからの時。そこには、なにが在ったー…?
前を見た。君が笑った。手を挙(あ)げて。
私を呼ぶ声。私を見るその瞳。すべてが初めてで、嬉しくて、幸せで…。

やっと前に進めた気がした。

近付いてくる君。大きくなる影。笑顔の君に手を振るよ。
やっと見つけた私の居場所。もう失くさない。握ったその手を離さないで。これからも一緒にいて。ずっと私と一緒にいて。

…私は…

あかりを、見つけた。

THE END
by wck-news | 2011-07-05 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』
☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」

人形

人形2011年1月8日。ある工場から、一体の人形が出荷されたー。

見つけないで。捜さないで。ひとりでいたい。ひとりになりたい。ひとりぼっちは嫌だけど、怖くなるから嫌だけど、静かなところでゆっくり考えたい。
わたし、幸せになっていいの? もう怯えなくていいの? 自分を生きていいの? 優先順位、間違ってない…?

愛されたい。幸せになりたい。誰かと繋がっていたい。ひとりになりたくない…。

また闇に戻るの? 誰もいない、真っ暗な世界に? …嫌だよ。光を見つけて舞い戻った世界はきっと前以上に恐ろしい。幸せな時間を知ってから堕ちる地獄はきっといつも以上に辛く感じる。愛を知ってから振り返る過去は、きっとなによりも傷く寂しく切ない…。

苦しいです。
救けて下さい。
そう言ったら、どうしますか? わたしのこと、救けてくれますか? それとも、また見て見ぬ振りですか? 何度苦しめれば気が済むんですか? わたしはあなたのなんなんですか…?

嘘じゃないのに。

信じてよ。嘘なんかついてない。本当に怖いの。苦しいの。幸せなんかじゃないの。ずっとずっと。
なにが幸せなの? 幸せってなに? あなたは幸せ? わたしは幸せ? 世界一幸せな人って、どんな人? その人は、いつも笑顔なの?

笑顔=幸せ?
そんな等式聞いたことない。偽の笑顔つくってる人は幸せですか? 強張った笑顔は幸せの証ですか? 悲しみ抑えた笑顔はなんなんですか…?

散るのなら、可憐に散りたいです。最期を見届けて欲しいです。鮮やかな最期。花びら落とし枯れるまで、少しでも色を残しておきたいです。踏まれて終わりを迎えたくないですから。…植物の成長には、光と酸素が必要不可欠なんです。人間だって同じ。わたしもおんなじ。

くらくて、ひとりで、なにもみえない。

息ができない。

ここは窮屈だよ。早くここから出して。なにも見えないよ。誰もいないよ。寒いよ。冷たいよ。ここはどこ? なに? 真っ暗闇に目が慣れちゃうよ。早く来て。早くわたしを見つけて。

救けて。赦(ゆる)して。もうこんなのやめましょう…?

もういいです。わたしのことを見つけてくれないのなら、もういいです。わたしに気付いてくれないのなら、もういいです。わたしはいつも人形だった。笑い方を忘れた哀れな人形。

簡単に戻れない。簡単に笑い方思い出せない。反応・行動。どう動けばいい? どうすれば人間らしい? どうしたら…どうすれば…。

愛されなかったから、愛し方が分からない。

素直に泣いていいんですか? それとも意地でも堪(こら)えるべき?

どうしていいのか分からない…。

必要なら教えて下さい。わたしの名前、呼んで下さい。わたしの記憶、呼び覚まして下さい。悲しいから、置いていかないで下さい。

もうひとりになんて、しないよね…?

嫌いなのは、否定されること。認めてもらえないこと。気付いてもらえないこと。

アイサレナイコト…。

影が薄いの知ってます。だから努力しています。少しでも気付いてもらえるよう、日々工夫してます。
それでも気付いてもらえなかったらどうしますか? それもわたしの責任ですか? 後はなにをすればいいんですか? これがわたしの運命ですか? 生まれながらの定めと言うものですか?

支配されるのは嫌なんです。もう自由になりたいんです。

さんざんわたしを操ったでしょ? わたしの人生奪ったでしょ? わたしのすべて、消し去ったでしょ?
他のものはなんでもあげますから。これだけは盗らないで。取り返しがつかないから。巻き戻せないから。
これ以上無茶苦茶するなら、わたし、怒るよ? 今度こそ、逆らうよ?

わたしが奪われたから、わたしは、君のこと、絶望に突き落としたい…。
君のすべて、消し去りたい…。
君の命、奪いたい…。

もういい加減、意思の通り動いていいでしょ? もうわたしに用はないんでしょ…?

役に立たない。必要ない。いらない。だから捨てよう。
そう決めつけないで。ちょっと判断早すぎませんか?わたしのこと、理解してませんよね? 知らないから捨てるなんて、少し間違ってませんか?説明書を読まなきゃ、できるものもできなくなる。わたしも同じ。仕組みを知れば、簡単なんです。わたし、捨てられたくない。頑張りたい。役に立てるよう、一生懸命する。だから、お願い。
見捨てないで…。

いらないと言うのなら、やり方を教えて下さい。やるだけやらせて下さい。捨てるならそれからでも構わないでしょ? もう見捨てられるのはこりごりなんです。扱いがひどくても人を感じていたいんです。他にはない温もりを。独特の優しい温度。あの温かさ。

手を握って下さい。他人(ひと)の優しさ教えて下さい。どんな時も近くにいてくれる人が好きです。信頼できる人になって下さい。信じる信じないの境界線ってどこですか?君はわたしを信じてくれているんですか…?

信じたいよ。信じられたいよ。

人形のような主従関係。そんなの、もうやめて。わたしを、わたしの人生を返して。人間らしく生きさせて。あの子のように愛をちょうだい。幸せを感じたいよ。笑っていい? いいよね? もうわたし、人形じゃないよね…?

闇に放り込まないで下さい。明かりをつけて。光を。太陽を。月のように奥ゆかしい存在でありたい。魂に刻め。心を忘れても、それは在るでしょ?

刻みたいから、相応の想い出、つくりたいです。新たな記憶、美しい人生を残したいです。わたしが生きたこと、忘れないで欲しいです。

だってわたしは、心を持って生まれた…

人間だから。

商品名:繊細な少女。
特徴:気弱で感情を出すのが苦手。少しの変化にも戸惑いがち。人形から脱出した少女。

脆(もろ)く壊れやすいです。取り扱い注意。


THE END
by wck-news | 2011-07-03 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』
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⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
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悲哀

『弱い』。そう思われたくないから、泣かないようにしています。
『でしゃばり』。そう思われたくないから、控えめに涙を流しています。
『可哀想』。そう思われたくないから、なにもなかったような顔を見せます。

外では絶対泣きません。その後が怖いから。

泣くなら一人で泣きたいです。どうしようもない悲しみに打ちひしがれて。
雨が降る下で泣きたいです。折れた雨傘片手に握って。
誰もいないところで泣きたいです。暗闇の中、光ったり消えたりを繰り返す柔な街灯を見つめながら。

どうしたら強くなれますか? 涙流さず生きられますか?

人を傷付けるのが嫌だから、自分自身を傷付けます。怖くないよ。痛くないよ。本当に痛い時は、ちゃんと言うから…。

我慢ばかりしていたせいで、涙の流し方を忘れました。
自己主張をやめてしまったせいで、人との接し方を忘れました。
自分の幸せを棄てたせいで、笑い方を忘れてしまいました…。

失った3つのもの。涙。愛。笑顔。

私が心を開かないから、誰も私を信じてくれない。私が誰かを愛さないから、誰も私を愛してくれない。

上辺だけの関係って、こういうことを言うの…?

どうしたらまた泣けますか? どうしたらまた人を愛せますか? どうしたらまた笑うことができるんですかー…?

…幸せになりたい。

いつか諦めた幸せを、もう一度求めていいですか? もう一度、あの頃のように笑っていいですか? 命を託せる人、見つけていいですかー…?
鍵を失くしたわたしを見捨てないで下さい。一緒に鍵を捜して下さい。それが無理ならせめて時間を下さい。猶予を与えて下さい。他に行く当てのないわたしは、ここにいるしかないから。

檻に閉じ込められたまま一生を生きるのは嫌です。後悔に苛まれて命を終えたくはありません。だから、ここから連れ出して下さい。檻の鍵を壊してでもいい。少しくらいならこの手に傷がついてもいい。わたしの伸ばす手を掴んで。早く来て。わたしを『悲哀』で終わらせないで。今すぐどこか遠くへ連れて行って…。

早く見つけたい。わたしの命。わたしが人生を懸けられるたったひとつの…。

いつになるか分からないけれど、どうか待っていて下さい。

冷たい雨が降り注ぐ。あとどれくらい待ったら救けに来てくれますか? 傘を差してくれますか?濡れる肩。震える身体を抱き締めてくれますか?
わたしなんてと思わないで下さい。わたしにはもう時間がない。残された最後の一人だから…。

…この鍵さえなくなれば…自由が手に入るのに…。

傷みなんか感じないよ。ほら、遠くに君が見える。今会いに行くから。

「待った?」
「ううん、待ってない。」
…ほんとはずっと待ってたの。どれだけ待たせたか分かってる?
言えない言葉を飲み込んだ。
東に向かうわたし達。今、小さくなった夕日が西に沈んだ。


THE END.




by wck-news | 2011-05-26 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』

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