ウィメンズカウンセリング京都          ☆スタッフblog

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カテゴリ:WCK公開講座報告( 11 )

「20年の実践報告とこれから・・・」

 ウィメンズカウンセリング京都(以下WCK)は、昨年秋に設立20年を迎えた。これまでの実践を振り返り、今後の活動を展望するために、2月11日、ウィングス京都において開催した20周年記念イベント「20年間のフェミニストカウンセリング実践 なにができて、なにができなかったのか?」について報告する。

◆ フェミニストカウンセリングの根本理念
        ――ジェンダーの視点に立つカウンセリングとは

 はじめに、WCK代表の井上摩耶子が、カウンセラーとしての歩み―障害児など子ども支援の現場で心理臨床をはじめたが、大学で学んだ伝統的な心理学が現場では何の役にも立たなかったこと、伝統的なカウンセリングにはジェンダーの視点がないことがずっと不満だった―を振り返り、河野喜代美さんとの出会いによってフェミニストカウンセラーに転向した経緯を語った後に、フェミニストカウンセリングについて話をした。
 フェミニストカウンセリングの根本理念は、「個人的な問題は政治的な問題である(personal is political)」であり、その始まりは70年代アメリカのフェミニズム運動を草の根で支えたCR(意識覚醒)グループである。女性たちは、家庭や職場での自分の経験を語り合うことで、自分たちが抱える困難が、自分の弱さではなく、性差別による社会的抑圧によって苦しめられていることが原因だと気づいた。そして、グループの中でうつ症状などに苦しんだり、グループに参加するのが難しい人のためにフェミニストカウンセリングが生まれ、発展した。
 フェミニストカウンセリングは、彼女たちを悩ませてきたさまざまな「症状」も、性差別社会の中での適応的な生き延び策だったと捉え、女性をエンパワーした。また、あらゆる価値から自由な心理療法実践は不可能であるとし、男性中心の価値観に基づいて、男性治療者によって構築された「客観中立的」「科学的」言説を批判。フェミニスト的価値をクライエントと共有し、一緒に女性が生き難い社会を変えていこうと呼びかけた。井上は、この「中立性」に疑問を呈するフェミニストカウンセリングの視点に基づいて、性暴力被害者の裁判支援をする中で、作成した意見書に対して、「中立性に欠ける」という批判に対抗したことを報告した。さらに、カウンセリングの中で行っている心理教育が、フェミニスト的価値をクライエントと共有するための有効なものであることにも言及した。
 フェミストカウンセリングは、また、クライエント―カウンセラー関係に内在していた力の不均衡も問題とする。フェミニストカウンセラーは、両者の対等性の構築を目指し、クライエントを「有能で、自分自身の経験についての最上の専門家である」と捉え、「無知(not-knowing)の姿勢」でクライエントの話を聴くのである。
 そして、この「無知の姿勢」が、近年注目を集めているナラティブ・アプローチの実践であったと確信した井上によって、フェミニスト・ナラティブアプローチとして実践され、結実していることが具体例を交えて語られた。「無知であることは、カウンセラーが重ねてきた経験と理解がたえず新しい解釈によって更新されることを意味している」「それにより『いまだ語られなかった物語』が語られる余地が生まれ、人生は何回も著述され直し、改訂版を出すことが可能になる」。クライエントとの共同作業の醍醐味が、自分にカウンセリングを続けさせてきたと語る大先輩の話はまさに圧巻であった。

◆ フェミニストカウンセリングができなかったこと、これからの課題
  おわりに、フェミニストカウンセリングの課題として、いくつかの問題提起があった。まず、「フェミニストカウンセリングを社会的、学術的にアピールする活動に力を入れること」である。井上は、昨年、日本トラウマティックストレス学会、日本子ども虐待防止学会において、フェミニストカウンセリング実践について報告した際に、フェミニストカウンセリングへの興味が高まっていると感じた。「伝統的心理学、精神医学を批判するだけではなく、そのいいところを学び、力をつけてフェミニストカウンセリングの実践、理論を外部に向けてアピールしていく活動が立ち遅れている。批判されることによってフェミニストカウンセリングは発展することができるし、みんなに知ってもらうことができる。みんなどんどんやって欲しい」と述べた。後輩カウンセラーへの叱咤激励である。
 次に、いまだにジェンダー平等が実現していない中で、「フェミニズム」という言葉を「もう古い」と感じたり、違和感をもつ若い女性たちにフェミニストカウンセリングをアピールすることも重要な課題にあげた。そして、男性性暴力被害者支援や男性加害者の更生カウンセリングにかかわった経験から、ジェンダー問題に取り組んでいる男性研究者たちとの積極的な共同作業をしていくことについても取り上げ、男性加害者更生プログラムに対して、フェミニストカウンセリングとして働きかけることは、女性性暴力被害者のアドボケイト(代弁・擁護)活動としても重要だと述べた。

◆ グループアプローチ
 次に小松明子が、WCKのグループアプローチ実践について報告した。WCKで開催してきた講座、グループトレーニング、当事者のためのグループなどについて紹介し、その基盤となるCR(意識覚醒)グループについて話をした。CRは、女性が自分自身の経験、それに伴う自分自身の感情や欲求を、自由に安全に率直に表明する場を提供する場、女性の経験を排除したり、軽んじることのない場を提供するものであること、だからこそ、自分自身の経験をこれまでとは違った視点で見直し、捉えなおしていくこと、社会の中に存在する女性差別を可視化することを可能にすることを示した。CRでお互いの経験を分かち合うことによって、女性が女性であることを肯定できる、尊敬できる人、モデルとなり得る人と出会うことで、男性中心社会での抑圧的状況を打ち破るチャンスになることは、さまざまなCRを経験した私自身の実感でもある。
 そして、CR的語り合いに基盤をおく、フェミニストグループアプローチが、ジェンダーの視点の導入によって、女性のエンパワメントを目指すために、「個人の経験を社会的な文脈のなかに位置づけ捉え直す」試みの構成要素を示し、WCKが開設当初から開設してきた、自己主張・自己尊重トレーニングの内容を紹介した。
グループトレーニングは、性差別をはじめとして、いろいろな抑圧をはねのけようとしている人間同士の共同作業から生まれるエネルギーに満ちた場である。そこで取り上げられる、女性役割と自分らしさの葛藤、他者との境界線、怒りといったネガティブな感情に対応する困難、女性が生活の中で直面する「性の二重基準(ダブルスタンダード)」「女性に対する二重拘束(ダブルバインド)」といったトピックは、多くの女性と共有することができる。男性優位社会の性差別的構造は歴然として存在しているのだ。
 最後に、今後の課題として、若年層、高齢層向けのプログラム、女性間のさまざまな格差、性の多様性に焦点をあてたプログラム、そして、性暴力にかかわる一般向けプログラム・当事者のための回復プログラムの開発をあげた。

◆ DV被害者支援
 竹之下雅代は、ドメスティックバイオレンス(以下DVとする)被害者支援について報告した。DVにかかわるこれまでのWCKの発信を紹介した後、フェミニストカウンセリングの視点に立ったDV被害者支援の特徴として、「DVを個人の問題ではなく、ジェンダー格差を利用した支配行動として捉える」「力の格差にセンシティブになる」「ドメスティックな場に不可視化されている暴力を明白にする」「支援関係を加害者との関係の再演にしない」ことが重要であると示した。そして、DV被害者の心理・社会的回復に向けてのサポート実践を具体的に報告した。
 DV被害からの回復には、被害を受けた当事者への理解、中長期的な心身のケアが不可欠である。それは、「無知の姿勢」をもって徹底的に聴く、ジェンダーの視点で話し合う、心身症状の正常化のための心理教育を実践することによる「支援関係における関係性の構築」が基盤となる。トラウマカウンセリングは、夫の支配からの離脱を促し、DVという自己の尊厳の剥奪・命の危機によって生じているさまざまなトラウマ症状のコントロール、「人生ストーリーの再構築」につなげる。暴力によって壊された「自己・他者・社会への信頼」の回復は、グループアプローチを含めた有効な語りの場の提供―奪われた“声”を取り戻すことによって実現することができる。
 竹之下は、自らのカウンセリング実践の中で、虐待加害を責められる女性、犯罪者となった女性、そして少なくない女性が抱えている心身の問題の背景にDV被害があることを示した。そして、現在力を入れている、子ども時代にDV家庭で育った女性たちの困難に目を向けたグループ実践について、当事者の声を紹介しながら報告した。当事者にとってのグループの重要性、かけがえなさが伝わってくる報告であった。
DV認知が社会的に広まった現在においても、DV家庭で育った子どもたちへの理解・支援は不十分であり、「福祉(特に児童相談所)・教育分野との連携」とともに、「性虐待の非加害親への支援といった、被虐待の子どもにとって希少な存在である母親への支援」「加害者プログラムへの発信」など、この分野でも課題が山積している。

◆ 裁判支援とアドボケイト(代弁・擁護活動)
 フェミニストカウンセリング実践は、伝統的なカウンセリングとは違い、カウンセリングルームで心理的支援をするだけのものではない。性暴力被害者やDV被害者に対するアドボケイト(代弁・擁護活動)という活動を福岡ともみが報告した。
 フェミニストカウンセリングのアドボケイトは、男性中心社会において、権利表明を困難にさせられ権利を奪われている人に代わって、ジェンダーの視点に立ち、当事者の権利を代弁・擁護する活動である。具体的には、「自分の権利回復を裁判に訴えた性暴力被害やDV被害の当事者のために意見書を作成する」「裁判の傍聴活動や証人として裁判に出廷する」「拘留中や受刑中の面会、文通」「関係機関への同行支援・紹介状の作成」「二次被害を与えた、もしくは無理解な対応を行った機関への異議申し立て」「家族などとの関係調整」といった多様な活動を指す。いずれも、権利擁護を求める当事者にとって不可欠な、しかし、著しく不足している活動であり、支援関係はそのかたちや距離の変化はあっても「一生ものの交流である」。
 福岡は、裁判支援でなぜフェミニストカウンセリング・アドボケイトが必要かを、実際の支援活動を報告することによって明らかにした。DV加害者である夫を殺害した女性たちがおかれていた深刻な状況、被害者に共通する追い詰められた心理状態に対する、警察官や検察官、裁判官といった司法関係者の無理解と、男性中心主義社会におけるジェンダー規範に基づく偏見による攻撃が、どのようなものであったかが示された。裁判の場では、DV家庭で生きてきた子どもたちへの深刻な影響もないものとされた。ジェンダーの視点を持ち、当事者主体の対等な関係を意識する支援者がいなければ、当事者は、中立性の名のもとに暴力をふるう国家権力によって、さらに尊厳を傷つけられてしまうのだ。
 今後のアドボケイト活動の課題として、「フェミニストカウンセリングの視点に立つ心理教育をまとめる」「ソーシャルワークとの違いを明確にする」「男女共同参画の視点に立つ多機関ネットワークの形成」が展望された。

◆ 性暴力被害者支援(京都SARAのスタート)
 最後に、昨年8月に開設した、京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター「京都SARA」(以下SARAとする)について、その中心的な役割を担う周藤由美子が報告した。
SARAの支援内容は、「電話と来所による相談(現在は毎日10時から20時、いずれは24時間体制を目指す)」「関係機関への同行支援」「機関連携における支援のコーディネート」「産婦人科医療、カウンセリングへの公費負担(警察の公費負担制度対象外の人が対象)」「証拠保管」と多岐にわたっている。いずれも性暴力被害者の多様なニーズに応えるものである。SARAは、大阪や滋賀、兵庫が実践している「病院拠点型」ではなく、「ネットワーク型」であるところにもその特徴がある。連携機関は、医療機関、警察、弁護士会・法テラス、京都犯罪被害者支援センター、カウンセリング機関・団体、家庭支援総合センター(府配偶者暴力相談支援センタ―)、児童相談所、市町村といったところで、連携だけとっても、高い専門性を要求される、フェミニストカウンセリングのアドボケイト理念が最大限生かされる場であるといえる。 
そして、行政と民間のネットワークによる、ジェンダーの視点による支援員の養成、フェミニストカウンセラーだけではなく、福祉職や看護職、市民活動家といった他分野の専門家を含めた多様な支援員による支援、幅広い支援対象、警察に届けない被害者への公費負担、そして、地域全体の意識の底上げをはかるというのがSARAの特徴であることが示された。
また、フェミニストカウンセリングルームが運営を任されることで、「早期のジェンダーの視点による心理教育が可能になる」「さまざまな場面でのアドボケイトが可能になる」「(アドボケイト活動とのスムーズな連携で)フェミニストカウンセリングによって回復まで支援できる」ことは、被害当事者にとっては大きな意味を持つ。
WCKが開設される以前から、民間団体のメンバーとして性暴力被害者へのアドボケイト活動を実践してきた周藤は、「SARAができたことで、被害直後やそれほど時間がたっていない人の相談を受けられるようになった。早期にジェンダーの視点での心理教育を行うことで、被害者が自分を責めることを防止でき、ケアが早くできる。それが本当にうれしい」と語った。SARAの存在を一人でも多くの当事者に知ってもらいたいと思った。
SARAの活動においても、「人材育成」「自助グループの支援」「他分野へのフェミニストカウンセリングの浸透」とともに、「全国規模の支援体制を作る」「包括的な性暴力をめぐる法制度の整備」など、今後の課題は多い。

 多くの方々のご支援のおかげでWCKは20年活動を続けることができた。改めて感謝の気持ちでいっぱいである。かなり駆け足の報告だったが、参加していただいた方にWCKがどのような実践を行っているか具体的に知る、理解を深める機会にしていただけたのではないかと思う。
私自身、今回発表を担当したことで、新しいことに挑戦しようとしていた当時の気持ちを思い起こすことができた。他のスタッフもそれぞれフェミニストカウンセリングに出会うに至るバックグラウンドを持っている。発表の機会のなかった彼女たちもこの20年間を振り返り、今後に思いをはせていたと思う。最近、新しいスタッフも加入したので、きっと新しい風も吹くだろう。WCKにとどまらず、日本のフェミニストカウンセリング実践が、次世代にも引き継がれていくことを願ってやまない。 (小松明子)

※WCKニュース第78号より転載

★公開講座に参加された皆様のご感想はこちらです!

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by WCK-News | 2016-04-30 00:00 | WCK公開講座報告
性暴力被害者にとっての「こころのケア」
~サバイバー,精神科医,フェミニストカウンセラーが語る

9月23日にウィングス京都で公開講座を行った。今回は、シンポジストとして岩井圭司さん、小林美佳さんをお招きして、コーディネーターを井上摩耶子が担当した。現在、京都府の呼びかけで性暴力被害者のためのワンストップ相談支援センターの準備が進められている。そんな中で、性暴力被害者の支援に必要な「こころのケア」について、サバイバー、精神科医、フェミニストカウンセラーがそれぞれの立場から語るという今回の講座は非常に意味のあるものだったといえる。以下に内容を報告したい。

● 岩井圭司さんのお話
  (兵庫教育大学教員 精神科医 臨床心理士)
心的外傷(トラウマ)とは
肉親が病気で亡くなったり、失恋したり、離婚したり、失業するなどは「悲しい」出来事かもしれないけれど、心的外傷ではない。心的外傷は、「恐怖」を伴うものである。心的外傷体験によって外傷性ストレスになり、それが自然に回復しないで症状が残るのがPTSD(外傷後ストレス障害)である。心的外傷はPTSDやパニック障害、うつ病、アルコール依存症など様々な病気を引き起こす。しかし、トラウマ以外でPTSDにはならない。
PTSDの症状は、DSM-5(アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)でそれまで3大症状だったのが、4大症状になった。
「侵入症状、再体験症状」は、フラッシュバック、悪夢などである。たとえば黒いコートの中年男性にものすごい反応をする。そうすると黒いコートの中年男性が出没する場所を避けるというのが「回避症状」である。そうなると冬場は全然外出しない、TVが見られない、ということになってしまう。「過覚醒症状」は不眠や知覚過敏。自分も阪神大震災で被災して、しばらくは家の近くをトラックが通って家が揺れるだけで、また地震がきたんちゃうやろかと思った。そういうのが「過覚醒症状」である。それに「認知と気分の陰性変化」を合わせて4大症状である。

孤立無援感について
トラウマにさらされてもPTSDになる人とならない人がいる。その違いは何か。「孤立無援感」が強い人はPTSDになりやすいし、回復もしにくい。PTSDからの回復の最大の阻害因子は孤立無援感である。
性犯罪被害者の場合は、なかなか口に出せない。同じ被害者となかなか出会えない。被害者バッシングもある。震災などと比較して孤立無援感が大きい。
フラッシュバックがあるなしに関わらず、トラウマで真に恐ろしいのは不信感が埋め込まれることである。まさしく離断といえる3つの不信感がある。「世界、社会に対する不信」「人間(他人)に対する不信」そして、「いつまで経ってもへこんでいる自分(私)に対する不信」である。
回復の手がかりとしては、孤立無援感を軽くすることである。PTSD症状自体はあまり問題ではない。肝心なのは、孤立無援感の軽減であり、人間の絆の回復である。「よく話してくれましたね」「それはつらかったでしょう」「あなたは悪くない」などの言葉かけが有効である。

治療、ケアについて
思い出したくもないつらい症状がいきなり侵入してくるのではなく、治療者とともにつらい体験をとらえ直し、恐怖を安心・安全と置き換えていくのが治療、ケアである。
「治療」はとにかく治すことをめざすが、「ケア」は「いま、ここで、できること」や「生活再建」に重点を置く。外科手術が痛いように「治療」はつらいものだが、「ケア」は、苦痛の軽減と安心の確保を目指すという違いがある。
トラウマの原因療法としては、病因を断つ「持続エクスポージャー(PE)」があるが、それに対して病因に負けないレジリエンス(回復力)を強化する「マインドフルネス(Mf)」がある。マインドフルネスは、心に浮かぶ思考や感情に従ったり、価値判断をするのではなく、ただ思考が湧いたとき一歩離れて観察することで、否定的な考え、行動を繰り返さない(自動操縦されない)ようにするものである。トラウマについて忘れろと言われても無理で、忘れようと思えば思うほど考えてしまうからである。

記憶のケア、「語る」を支えるケアへ
社会にはトラウマを忘れ去りたいという働きがあるが、忘れないようにしようという考え方もある。遺族には「忘れていく」ことへの抵抗がある。自分が忘れてしまうと世間から忘れられてしまうという、世間の記憶の風化への抵抗がある。だからこそ社会で記憶は共有しなければならない。
また、現在の「プラス思考」ブームの陥穽を指摘したい。たとえば、「過去にとらわれず前向きに」「常に前向きであらねばならない」「常に自分に発破をかける。ファイト一発!」「泣くのが嫌なら、さぁ歩け~♫」などがポジティブとされている。しかし、真のポジティブ思考とは「失敗も財産のうち」「大抵の場合、やり直しはきくものだ」「捨てる神あれば拾う神あり」「やまぬ雨はない」「困難からは逃げろ。勝つために逃げろ!」「常に困難に直面できる者などいない」「計算通りに事は運ばない。あなたの人生は決められてはいないのだから」「そのうちなんとかなるだろう~♪」などである。
最後に「不安をとりのぞくことなんてできないんだから、不安なままで安心しなさいな」という言葉を送りたい。

● 小林美佳さんのお話
  (『性犯罪被害にあうということ』・『性犯罪被害とたたかうということ』著者)
2004年8月31日に被害にあった。被害から14年になる。仕事から帰る途中に車に引きずり込まれて、目隠しをされ、音楽がガンガン鳴っていて、耳元でカッターナイフのカチャっという音がした。そのときに思ったのは「殺される」「生きて帰れない」ということだった。そして「生きて帰りたい」「死にたくない」と強く思った。だから抵抗する、暴れるなんて考えもしなかった。歯を食いしばって我慢した。その間は20分くらいだったけれど、車から降りてから「自分は汚い」「みっともない」「人には話してはいけない」「言ってはいけない」「誰にも言えない」と思った。
その後、元彼に連絡して、警察に行き、女性の刑事さんに婦人科にも連れて行ってもらった。7年後、被疑者不詳で事件は不起訴になった。
翌日、仕事に行った。休む理由を口に出せなかったからだ。人に相談できなかった。

PTSDの症状
岩井先生の話を聞いて、「私はPTSDだったんだ」と改めてわかった。症状としては、被害が駅から自宅の間で起きたので、駅に向かおうとしたら、駅に向かっただけで倒れてしまった。意識をしばらくなくしていた。それで別の駅を使うことにした。
電車で隣に犯人と同じような体格の男の人が立っただけでもどしてしまった。電車の中で水着の写真や集団強姦の記事などが広告に載っているともどしてしまう。
食べられない、寝られない。パチンコ屋さんでガンガンと大きな音がすると倒れてしまう。
でも、それが被害と関係があると思わなかった。悟られないように毎日生きるのに精一杯だった。
4ヵ月後に打ち明けた母は「なんで今頃話すんだ」「今まで感じ悪かった」という反応だった。そして「今の話は2度と人前でするんじゃないわよ」と言われた。それで、自分は「人にとって迷惑なダメな存在なんだ」と思った。
岩井先生が説明された中の「人に対する不信感」「自己の否定」が自分にもあった。でも、被害にあったときの「生きたい」という強い気持ちが支えだった。あれだけ生きたいと思ったから生きていこう、と思っていた。
フラッシュバックになると真っ白になって何もできなくなるけれど、予兆があるので、トイレでそうなれば大丈夫とか、寝られないのも3日目には寝るとか、自分なりに策を考えればそれまでと同じ生活を過ごすことができた。3年経って結婚して、普通の生活に戻ったと思ったのだけど、離婚して逆戻り。被害直後の状態に戻ってよけい悪くなった。

カウンセリング、心のケアについて
これはマズイと思って、その頃はネット検索ができるようになっていたので検索をした。7~8年前は今のように犯罪被害者支援、心のケアというのを見つけることができなかった。カウンセリングは何軒も探した。忘れられないのは2軒目で、白衣を着てポケットに手を突っ込んで話を聞いて、私が被害にあったことを話すと、笑顔で「わかりますよ」と言われたこと。わかるわけないだろうと思った。
予約のときに「カウンセラーは女性がいいです」と言っても、「ここはクライアントの希望は聞かない」というところもあった。精神科はハードルが高い。「PTSDと診断されてもどうなる?」と思っていた。8軒目に被害者支援を前面に出したところがあって、この人ならと思える人に出会った。2週間に1回のペースで通って、「2週間我慢すればあの人にしゃべれる」と思えるようになった。
孤立無援感の打破
そのうちサイトで7人の当事者に出会って遊びに行ったりした。当事者同士だと言ってはいけないということがない。同じ体験をしたので縛りがない。被害に遭う前と同じ状態に戻れた。隠し事をしなくていい。自分が悪いと思わなくていい。
2008年に本(『性犯罪被害にあうということ』)を出したところ、毎日メールが来るようになった。男女も年齢も問わず、自分も被害にあったと。みんな「言えなかった」「言えない」「内緒にしていく」という、誰にも打ち明けない人ばかりだった。孤立無援感だった。私は支援者じゃないので「わかる」と言う。「理解」を口にしている。「孤立無援感の打破」ですね。
カウンセリングや友だちにたどりつくまでの時間は、人や社会を信じられずにいた。そんな中でも、一つ皆さんに紹介したいエピソードがある。
被害の翌々日に現場検証に行ったときに、代わる代わる男の刑事さんが入ってきて声をかけてくれた。でも、自分はうっとおしくてしょうがなかった。被害の現場に向かう途中で、前を歩いていた刑事さんが「自己紹介してなかったね」といきなり目の前に警察手帳を突き出してきた。手帳には舘ひろしの写真が貼られていて、え?と思って思わず笑ってしまった。被害の2日後に確かに笑った。父親や兄は公園に張り込んで犯人を探そうとした。みんな犯人に関心が向いているように思えたときに、犯人に向かうんじゃなく、自分と向き合ってくれる人がいた。きっと自分に向き合ってくれる人がいるに違いない、社会に対する信頼感の意地みたいなものを持った。
どんな言葉をかけたらいいか聞かれたりするけれど、先ほどの岩井先生のお話を否定するわけではないけれど、この言葉を言えばいいというのではなく、どんな言葉でもいい。どんな言葉でもいいからきっと最善の言葉がある。被害者に向き合ってほしい。

● 井上摩耶子の話
  (ウィメンズカウンセリング京都) 
フェミニストカウンセリングとはPersonal is Political (個人的な問題は政治的な問題である)というフェミニズムの視点、ジェンダーの視点に立ち、女性の人権侵害を扱うカウンセリングである。問題はあなたにあるのではなく、加害者の問題であり、性暴力を容認する社会の問題であるという「ジェンダー心理教育」を行う。女の「ノー」は「イエス」のサイン、男の性欲はコントロールできないのだからスキを見せた女が悪い、ちゃんとした女なら死ぬまで抵抗したはずなどの「強姦神話」にみられる社会のジェンダー・バイアスに対して、裁判支援、法廷への意見書提出・専門家証言など性暴力被害者のアドヴォケイト(代弁・擁護)活動を行う。

フェミニスト・トラウマカウンセリングの実際
回復には、基本的安全感の確保、外傷物語の再構築、再結合の三段階がある。
外傷物語の再構築(想起と服喪追悼)では、ジェンダー心理教育(「あなたは悪くない」)によるストーリー化を行う。ナラティヴ・アプローチによって、カウンセラーは、その被害者のナラティヴ(語り)を、被害者と協同して「強姦被害者物語」に再構築する。それは、社会に「支配的な物語」として流布されている「強姦神話」に対抗する「もう一つの物語」としての「強姦被害者物語」の再構築である。
再結合とはサバイバーの社会的回復であり、エンパワーされた被害者は、強姦加害者や強姦を容認している社会と闘い、社会的正義やジェンダー正義を追及しようとする「サバイバー・ミッション」を発見することもある。このプロセスをともにするカウンセラー、精神科医、弁護士、サポーターとの出会いによって、社会的つながりを回復し、孤立無援を脱し、世界や他者との再結合を果たす。

● 井上さん、小林さんから、岩井さんへの質問
Q:福祉に心のケアが入っていないのはなぜ?
A:行政に心のケアの考えがないということもあるが、精神科医、カウンセラーの責任もある。カウンセリングルームの中でいいカウンセリングをするもので、アウトリーチなんてとんでもないという考えがある。ある臨床心理士がスーパーバイザーとして「アウトリーチするな」と指導していた。カウンセリングルームの中で行うそのままの手法ではできないかもしれないが、アウトリーチの手法はあるはず。
精神科医も、研究至上主義で、MRIを使って脳の損傷など機能的な説明をしようとするか、地道な地域精神医療をやっていて、PTSDやこころのケアはどうかと思っているかの2つに分かれている。そのどちらでもない第三の道を切り拓いていく責任がある。これまでの精神医学には心の問題は入っていなかった。
司法に引っ張り出されるのを嫌だという精神科医も多いが、それは司法にも問題がある。奈良の放火事件で鑑定記録を公開したとして起訴されたのは鑑定医だけ。見せしめ的なやり方で、裁判に関与することが怖くなってしまう。しかし、裁判に専門家が関与することは当然のことである。

Q:裁判とPTSDについて
A:PTSDについての鑑定は、傷害罪でこの凶器で傷がつくかどうかという鑑定と同じようにはいかない。他の要因で起こったPTSDとの区別はつかない。主観性要因といって、同じような体験でも、またそれが軽いトラウマ体験でも人によって重い症状になることはある。
それではどういうことを意見書で書くかといえば、合意があったと主張してくる加害者に対して、被害者の主張の事実があったとしたらPTSDの症状が説明できるが、加害者の主張なら説明できない、ということを書いている。
医学的症状や病名については書けるが、事実認定は鑑定の責任ではない。裁判長の心証で事実があったとなれば、鑑定が引用されることになる。事実認定を依頼されても書けないということもあるだろうが、医師はすぐに断るのではなく、こういう鑑定事項だったら受けられると伝えたらいい。

Q:意見書や鑑定書を頼んでも書いてもらえないという話はよく聞く。岩井先生のように書いてくれる人にはどうやってたどり着いたらいいのか。
A:医師は、診断書は頼まれたら書かないといけない。PTSDと書けなくても言える範囲で書いたらいい。自分は初診から「極度の不安と緊張状態、PTSDの疑い」と書く。
鑑定書は断ることができる。金額が安いから断るというより、面倒だということが大きいだろう。
大学付属のカウンセリングセンターで「性暴力被害も扱う」とあるところや、犯罪被害者支援センターから地元のカウンセリングルームを紹介してもらえる場合もある。警察は縦割り行政なので、所轄よりは県警本部などにアクセスした方が確実だと思う。

● 会場からの質問
Q:男性やセクシュアルマイノリティの被害者について。
小林さん:メールでやり取りしている被害者のうち5%くらい男性被害者がいる。会ったりすることもある。印象としては窮屈そう。女性より相談できないようだ。セクマイの方とも交流があって、多様なのですごく難しい。偏見や社会の圧力はぶ厚いので薄くなる方法を考えていきたい。

● 最後のコメント
岩井さん:自分は精神科医としてのキャリアは30年だが、そのうち20年間トラウマに関わってきた。最初の10年はクライアントさんを理解しようと努めていた。でも、理解できたと思うのは危険。被害者にとっても理解されるのは侵入されること。理解できなくても一緒にやっていくというふうに変わってきた。ジャッジメントした(=裁いた)り、コメントしたりするんじゃなく、愚鈍な立場で聴き手になるというのが大切。ナラティブ=伝える情報より、ともに語る(浸る)情報を、と考えている。
小林さん:支援者が望む当事者像があったり、当事者の望みじゃなくて何か支援者のつくったレールがあってそこに乗っけようとしているように感じることがある。当事者は支援者が言うなら乗っかるしかない。いい子なふりをしている当事者がいる。当事者に気を遣わせていないだろうか? 初心に戻ってもらえればと思う。人としてできることを考えてほしい。マニュアルもあるかもしれないけれど、違うところがあれば見直してほしい。
井上さん:医者もカウンセラーも、マニュアル化されたものによってではなく、対等な関係を作っていくことによって支援していきたいなと思う。

● 当事者の立場に立ったワンストップセンターを
 岩井さんからの「PTSDからの回復の最大の阻害因子は孤立無援感」、小林さんの「被害者に気を遣わせていないか」「(事件や加害者ではなく)被害者に向き合ってほしい」など様々な心に残る言葉があった。当日の参加者の中には、支援者の立場の方も多く、アンケートでは「小林さんの言葉を心に刻んで支援していきたい」というような感想も多くみられた。京都で開設されるセンターでは、当事者が人、社会、自分自身への信頼感を回復できる支援を実現できればいいと思う。

                                              (WCKニュース第72号より転載)
by WCK-News | 2014-10-25 00:00 | WCK公開講座報告
2013年9月27日 WCK公開講座
「性暴力と刑事司法―性暴力加害者の責任を問う!」

 2013年9月29日のシンポジウムでは、性暴力にかかわる刑事司法において、加害者の責任が追及されない現状を問うことをテーマに、「性暴力加害者捜査の問題点」を京都大学アジア研究教育ユニット研究員の牧野雅子さんから、そして「性暴力裁判の問題点」を、弁護士であり立命館大学法科大学院教員の吉田容子さんから話を聞いた。

■ 加害者捜査には重大な問題がある
 牧野さんは、日本の裁判では警察や検察の証拠が重視されること、警察が被害当事者に与える影響が非常に大きいことに着目し、「捜査において加害が適切に調べられ、裁かれているのか」という問いを立て、直接調査した連続強姦事件の捜査の問題点を述べた。それは、夜間一人歩きをしている見ず知らずの女性を狙う、凶器を使用するといった、「加害行為の悪質さが徹底して追及される」「被害者の『落ち度』等は問題にされる余地がない」はずの事件であり、調査は裁判傍聴、事件記録の閲覧、加害者に対する200回を超えるインタヴュー、犯人の日記の分析によって行われた。
 それによると、犯罪の立件においては非常に重要で、本人の語りによって導き出されるべき犯行動機が、性犯罪では「性欲を満たすための犯行」という前提の先取りがあり、それを立証するための証拠品だけを捜索、本人に性的欲求不満があったことを供述させる。取調官個人の性暴力観、ジェンダー観といった個人的な問題にとどまらず、捜査参考書に書かれている「性犯罪の動機は性欲」という考え、それに基づいた取調項目に従って組織的に供述調書が組み立てられていく。「供述調書は供述者が自由に語った記録ではない」のだ。牧野さんのインタヴュー相手は「あの衝動は性欲なんかじゃありませんよ」と語っていたという。
 「性欲本能説」を前提とした捜査では、その説に不都合な部分に悪質性があっても供述調書には書かれない。性犯罪の重大性、加害性の追求は不十分になる。「性欲」の発露にかかわったとして被害者に責任を負わせるのだ。「未遂」に終わった事件では、被害者の抵抗はなかったことにされ、加害者の「情け心」による自主的な中止、との供述調書が作成された。犯罪事実の供述を得ることが優先される取り調べでは、取調官が加害者(被疑者)に共感する、加害性を矮小化する手法が取られるが、それ自体問題視されないことも述べられた。その結果、裁判で加害者が思っていた以上の量刑が出た場合、その怒りが被害者や社会に向けられるリスクもあるという。そして、このような手法では、犯罪行為に及んだ本当の理由が全く明らかにされないために、再犯防止対策に支障が生じるのだ。こんな捜査自体がほとんど犯罪的ではないか!

■ 強姦罪をめぐる裁判の問題点
 次に吉田さんが、「暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。(以下省略)」という刑法の強姦罪の定義を示し、そのどこにも記されていないにもかかわらず、裁判では事実上「(犯行を)著しく困難とする抵抗」がその要件になってしまっている実態を報告した。また、被害者が女性に限定されていること、対象行為が性器結合のみとしていることと併せて考えると、強姦罪は戦後、個人的法益(性的自由・自己決定権)の侵害とされているが、「貞操」が実質的な保護法益(女性には貞操を守る義務があり、強度の暴行脅迫に屈しない場合に保護をする)になっているという根本的な問題点について指摘があった。その考え方が、裁判において「性行為にはそもそもある程度の『有形力の行使』が伴う(但し、何が『通常伴うある程度の有形力』なのかの説明はない)。有形力の行使があっても、性的自由・性的自己決定権の侵害がなければ犯罪は成立しない」「合意でないなら抵抗するはずだ。しかも性的自由・性的自己決定権は重要だから、それを守るためには『死に物狂いで抵抗』するはずだ。そのような抵抗が困難なほどの強い暴行脅迫があるなら別だが」というに筋になっている。「合意に基づかない性行為における有形力の行使」か否かのメルクマールが、「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度の暴行脅迫」だというのである。ものすごいジェンダーバイアスである。
 そして、客観的証拠がない場合が多く、最終的には加害者と被害者のどちらの供述内容の信用性が高いかで判断される事実認定の判断基準にも重大な問題がある。刑事裁判においては、「通常時」の「一般人(自由にYES、NOを言う自由を有する)」の経験則、つまり犯罪が起こっている渦中の当事者には当てはめられないはずの経験則が当てはめられているのである。吉田さんは、「法律家は性犯罪加害者や被害者の心理・行動についての専門家ではない」「性犯罪の認定には、社会学・心理学等の専門的知見、複数の専門家による帰納、従来の被害者像・加害者像の転換が必要だ」と強調した。

 コーディネーターの周藤は、ジェンダーの視点での性暴力被害者支援のネットワーク構築の必要性、フェミニストカウンセリング、フェミニストアドヴォケーターの役割、そして、性暴力被害者の心理的回復のために、加害者の責任を明確化すること、法的手段をどう考えるかについて問題提起した。刑事司法の現状はジェンダーバイアスに満ちている。大きな課題に直面したシンポジウムだった。
(小松 明子 WCKニュース第69号より転載)
by WCK-News | 2014-01-31 00:00 | WCK公開講座報告
2013年7月 大藪順子 写真展&講演会 
「性暴力サバイバーたちの決断と今」 報告

 7月12日から14日まで、京都で初めて大藪順子(のぶこ)さんの写真展と講演会(13日)が開かれた。大藪さんは、著書『STAND-立ち上がる選択』(フォレストブックス出版)でご存知の方も多いと思う。アメリカ在住のフォトジャーナリストで、1999年に就寝中に自宅でレイプ被害を受け、2001年よりアメリカとカナダで約70人の性暴力被害者を取材撮影し、写真プロジェクト「STAND:性暴力サバイバー達の素顔」を発表。米政府犯罪被害者支援機関の全米性暴力防止キャンペーンにも携わったという方だ。
 今回の企画は京都市が主催で、ウィメンズカウンセリング京都とウィングス京都が企画運営したもので、13日の講演会「性暴力サバイバーたちの決断と今」は大藪さんと井上摩耶子が講演を行った。当日は80名近くの会場がほぼいっぱいになり、参加者からは「勇気をもらった」などの反響があった。誌面の都合で、大藪さんのお話を以下に報告したい。
 自分は自宅という安全なはずの場所で被害にあった。被害によって失ったものは自尊心やコントロール。恐怖に閉じ込められて不自由になった。「どうして私にこんなことがおこったの?」と思った。レイプクライシスセンターの支援員でもあるカウンセラーに3カ月間カウンセリングを受けた。最初に「あなたのせいじゃないのよ」と言われたときには、「そんなのわかってます!」と逆ギレした。でも、頭でわかっていても心に入ってなかった。後から、「もっと頑丈なカギをかけていれば」「友だちの家に泊まっていれば」などと考えてしまった。
 被害後すぐに警察を呼び、病院で診察を受けた後、これから長時間事情聴取を受けなければならないのだろうと覚悟していた。でも、警察官から「今日は疲れただろうからシャワーを浴びて寝たらいいよ」と言われた。そして約束した時間に出向くと、「1回ですむようにみんなここで集まっている」と刑事や検事が一堂に介していた。これはアメリカのSART(性暴力対応チーム)システムが機能していたからだ。被害者である自分が考える前にまわりが動いてくれたという感じだった。
自分の被害は、一人暮らしの女性の家に犯人が侵入してレイプという「レイプ神話」に合っていた。でも、実際は9割近くが知り合いが加害者。だから被害者が責められる。なぜ加害者は責められないのか。日本では「痴漢に注意」とあったが、最近、「痴漢は犯罪です」とあるのを見て、やっと加害者の問題であると考えられるようになったと思った。
写真プロジェクトは、カウンセラーから無地のTシャツにメッセージを書いてつなげていく「クローズラインプロジェクト」を紹介されたことがきっかけだった。Tシャツを見せてもらって、Tシャツの裏に隠れている人が表に出てきてくれたらと思った。被害にあったからこそ、言えることがある。みんなどうしてこういう目にあったのか答えを探してる。顔と実名を出してというのは勇気がいる。でも、被害者はしゃべりたい。誰かに何かをしたいから。でも場所がない。社会が耳をもたない。
アメリカでは18歳までに女の子の4分の1、男の子は6分の1が被害にあっている。日本はいじめに隠れた性暴力があるのではないか。画像がインターネットで流されて、大人になって何をされたのか気づくということもある。ハワイの刑務所の加害者の85%が性暴力被害者。性虐待を防止することが犯罪を予防することにつながる。一人の加害者は、一生のうちに60人に被害を与えるというデータもある。性暴力や性虐待について声を挙げることで、どれだけ社会貢献につながるか。
大藪さんのお話の中で、逆ギレされようが『あなたのせいじゃない』といち早く聞くことは被害者にとって意味があるという趣旨で語られたことが印象に残った。アメリカでは資金集めのために有名人のサインのオークションをしたり、派手に楽しくやることも大事というお話にもなるほどと思った。京都でも性暴力被害者支援のネットワークをつくろうという動きもあり、本当にタイミングのよい企画だった。
(周藤由美子・WCKニュース第68号より転載)
by WCK-News | 2013-11-01 00:00 | WCK公開講座報告
4/14 WCK公開講座
セクハラ労災を知っていますか?

春の公開講座は「セクハラ労災」をテーマに4月14日、ウィングス京都で開催した。講座はまず周藤由美子が「セクハラ労災のこれまで」を説明し、次に用意した「21の質問」に社会保険労務士の原多恵子さんから答えていただく形式で「セクハラ労災の実際」を学んだ。遠隔地から来られた方もいて50人の参加者は、熱心に講師の話に聞き入った。
周藤は、「被害当事者が支援者とつながり、あきらめないで勝ち取ってきたのがセクハラ労災の流れであると思う」と話し、セクハラ労災が実に多くの女性たちが努力して社会や政府に訴え、できあがったものであることを伝えた。原さんは、「セクハラへの社会の印象は軽く思われがちだが実態はそうではない。犯罪が起きていたり、体調が悪化したり、退職に追い込まれたりしている。決して軽いものではない。また特別な人に起こることではない。労働権、生活権、生存権を脅かす問題である」と述べ「21の質問」に答えていった。
「21の質問」は「1.労災保険制度について 2.労災の相談・申請手続きについて 3.認定基準について、その他」のジャンルに分けられている。原さんから冒頭、労災保険法は労働基準法(第8章75条~84条)に基づき事業主の災害補償責任が確実に果たされるように作られたもの・あらかじめ国が運営する保険に事業主を加入させ、被災した労働者あるいは遺族に対して国が直接保険給付する制度であること・事業主の災害補償責任を肩代わりする保険なので、それが保険給付の財源になること・保険料は事業主が負担すること・事業主が労災保険に入っていなくても労災保険は支給されること等の説明を受けた。そして、給付の内容、認定されてからいつまで支給されるか、時効があるか、傷病手当・障害年金などと労災保険給付の関係、民事訴訟で慰謝料を受け取った場合にはどうなるか等、細やかな質問に答えていただいた。
ちょっと驚いたのは、労災保険上の治癒とは「症状固定」を指すとの説明だった。アドヴォケイトしていく際、労基署と言葉の定義が異なっていることを踏まえ行う必要があると思った。即戦力の知識を楽しく学べた公開講座であった。                    
 (福岡ともみ WCKニュース第66号より転載)
by WCK-News | 2013-07-31 00:00 | WCK公開講座報告
9/16公開講座「DV家庭で育つ子どもたち」 報告           

DV家庭で育った子どもたちには一人ひとり異なる苦しみや悩みがある。「子どもたちは自然に回復する」なんて嘘である。そういう子どもたちもいるだろうが、私の出会った子どもたちは皆、心に誰にも語れないものを抱えて苦しんでいた。「誰にも話したことなんてない」「そんなこと友だちに言ったらおかしいと思われるよ」子どもたちはそう話してくれた。子どもたちは話を聴かれていない。
公開講座は井上摩耶子(WCK)の参加者にむけた「安全保証のお願い」から始まった。自分の体験を語ると言ってくれたお二人のサバイバーズミッションに応え、彼女たちがこれから社会に対して信頼感をもって歩むための時間にするという意味が説明された。
 Aさんは、まず「2年くらい前まで他人の人生を歩んでいたみたいだった」と現実感のない感覚を表現してくれた。引きこもったことも、ナイフを持ち歩いたことも、人の笑い声が多方向から聞こえたこともあるそうだ。そして、DVについて「力の弱い人に向けるゆがんだ愛情」で、「必ずしも悪ではない」「あの父と会ったから立ち向かう強さをもらった」という考えを語ってくれた。
 Bさんは、小学生のころ何も説明されずに母親と家を出た体験から話が始まった。面接交渉にまつわっての傷つき体験や、様々な場面で父と母の間で引き裂かれるような辛さを感じたことが語られた。DVの心理的影響としては、大きい音が苦手で、震えが止まらない、電車の通過の音が人の叫び声に聞こえて苦しかったこと、兄弟にも影響が出ていることなどを話してくれた。そして、最後に「DVの根絶は難しいと思うから、逃げた母子への法整備と周りの偏見をなくしてほしい」と結んだ。
 お二人の話に心を動かされた私たちだが、質疑応答の時間にはそれぞれ親としての、子どもとしての、支援者としての体験を分かち合った。参加者の方たちにも感謝である。私は彼女たち自身のレジリエンス(回復力・弾力性)とカウンセラーという聴き手の存在に感動した。
「誰も知らない」ことを語ってくれたお二人に応えて、私たちの今日からがある。 
                             (竹之下雅代・WCKニュース第64号より転載)
by WCK-News | 2012-11-01 00:00 | WCK公開講座報告
「女性と貧困」について考える    周藤由美子

はじめに
WCKでは、4月15日に京都で反貧困ネットワーク京都と共催で公開講座「女性と貧困 ジェンダーの視点で当事者目線で考える」を開催した。赤石千衣子さん(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事、反貧困ネットワーク副代表、東日本大震災女性支援ネットワーク世話人)、伊田久美子さん(大阪府立大学教員、女性学研究センター長)、丸山里美さん(立命館大学教員、女のおしゃべり会)の3人のシンポジストのお話をまず簡単にまとめたい。

 赤石さんのお話

● なぜ女性の貧困が見えにくいのか?
貧困問題が社会問題化したのは「ネットカフェ難民」「ワーキングプア」に関するメディアの報道であり「派遣村」だった。若い男性がネットカフェで寝泊まりして日雇い派遣で働くしかない「男性の貧困」を取り上げたものだった。しかし、様々な貧困のデータからは、「女性の貧困」の深刻さが浮かび上がる。(「女性はほぼ全年代で男性より貧困」「女性の半分以上が非正規雇用労働者」「若い女性の非正規化が激しい」「高齢女性の貧困も深刻」) 
なぜ女性の貧困は注目されなかったのか。それはこの社会の「正社員男性片働きシステム」=「女は扶養され家事育児の担い手」と大きくかかわっている。

● 若い女性の貧困 
財団法人横浜市男女共同参画推進協会が2009年4月に行った「若年女性無業者の自立支援に向けた生活状況調査」では、彼女たちの生活上の困難な体験は「職場の人間関係トラブル」「学校のいじめ」「精神科・メンタルクリニック通院」「一か月以上の服薬」「親など家族からの支配・期待が重荷」「食べ吐き、過食・拒食」「不登校」「家族からの暴力・虐待」「性被害」など。多重的に困難を抱えていて、結婚や将来の暮らし方が見通せない状態にある。しかし、仕事に不安や困難を感じながら働きたいと希望しているのだ。

彼女たちへの支援として、マイクロソフトが支援して各地で講座を開いている。横浜では「若年女性のためのガールズ編しごと準備講座」がある。彼女たちは携帯メールはできるがキーボード操作には慣れていない。講座でも最初は緊張してストレスで何度もトイレに行ったりしていた。そこでリラクゼーションや自己肯定感のワークなどをする。卒業生には「めぐカフェ(就労カフェ)」を開いて練習させている。

● シングルマザーと貧困
日本のシングルマザーの就労率は約84%で世界でも3番目に高いけれど、就労収入は平均171万円と非常に低い。手当や養育費などを含めた平均年収でも213万円で、父子家庭の年収は421万円で2倍くらいの収入がある。
2003年から国の母子家庭施策は就労支援に力をいれ、その代わりに児童扶養手当の有期化(5年で半額)をすすめた。(しんぐるまざあず・ふぉーらむなどの運動で、児童扶養手当の半減は凍結させている。)しかし、この施策は失敗した。日本のシングルマザーの就労率は国際的にも最高なのだ。もし就労支援をするなら、質の高い、正社員で、ワークライフバランスの取れる仕事に就けるような支援であるべきだった。
シングルマザーになってすぐに働かなければならないときに仕事・住宅・保育すべてをカバーできるか?そんなときにキャバクラが寮や託児所完備と宣伝してくる。一時的でもキャバクラで働こうかなと思うシングルマザーがいても不思議ではない。子どもたちとの時間を持てるという誘惑は大きい。
 大阪の幼児置き去り事件は、母親(被告)へのバッシングがすさまじかった。しかし、被告は困難な生い立ちの中で孤立していたにも関わらず、布おむつや母乳での子育てなど「よい母親」をめざしていたが、仕事・保育・住居すべてが揃ったのは夜のキャバクラ・風俗だったのだ。また、彼女はシングルマザーの支援策を受けていなかった。この事件はシングルマザーの貧困を放置した結果の、社会によるネグレクトではなかったか。
 また、シングルマザーが福祉を受けるためには「男の影」があってはならないというプレッシャーも大きい。宇治市の生活保護受給の際の誓約書のように「男がいるなら扶養してもらえ」という規範がある。これは日本だけでなく全世界的なことで、「クローゼットに男を隠しているだろう」と言われる。

長いのでたたみます。続きはこちら!
by WCK-News | 2012-07-01 00:00 | WCK公開講座報告
LGBTの人たちの望むサポートとは-当事者と家族から学ぶ
(2011年9月11日実施)

WCK公開講座「LGBTの人たちの望むサポートとは?―当事者と家族から学ぶー」を、9月11日、ウィングス京都で開催した。シンポジストは、QWRC(くぉーく:多様な性を生きる人々のリソースセンター)スタッフの桂木祥子さん、NPO法人LGBTの家族と友人をつなぐ会東京理事の小林りょう子さん、コーディネーターはWCKスタッフの大槻有紀子である。
 LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)は「性的マイノリティ」の人々を総称的に表す用語として広まりつつあるが、セクシュアリティの多様性が受け入れられているわけではない。その「性的マイノリティ」への差別の問題は「女性」に対する差別の問題とも地続きであるという現状認識のもと、本講座は、フェミニストカウンセリングはLGBTの人たちとどうかかわることができるのかという課題に対して、まずは当事者と家族のお話を聞くことから始めたいと開催したものである。

 小林さんは、生まれたときは女の子とされたけれど「本来の自分に戻るために」男性適合手術を受けた子どもさんとのことを率直に話してくださった。自分が生きやすいように生きると覚悟を決めて努力している子どもを適合治療の副作用を心配しながらも受け入れるしかないと決めた親の覚悟の潔さに、私自身の親としての覚悟が問われた気がした。「LGBTの家族と友人をつなぐ会」で親へどうカミングアウトすべきかという相談を受けたときには、「これまでの親子関係次第だから、必ずカミングアウトしなければならないと思い詰めることはない」とアドバイスするという話も納得できた。
 一方で、ジェンダー規範にしたがう子どもさんのことをフェミニストカウンセリングの立場からは少し気になるという話もあって、その気持ちにも共感できた気がした。

 桂木さんは、性を考える指標として、身体の性(sex)、性自認(gender identity)、性的役割(gender role)、性的指向(sexual orientation)の4つをあげ、正しいセクシュアリティがあるわけでなくひとりひとりの性別のあり方は違うということを説明された。
また、「今日からできること」として、①自分自身のセクシュアリティを考えること、②ホモネタで笑わないこと、③それは、本当に性別が必要なことか検討すること、をあげられた。この3つはわかりやすく簡単そうに思えることでありながら、実行するには考える必要がある奥深い意味をもつ行動提起だと思った。そして、QWRCが作成されたDVD「LGBTインタビュー」を見せてもらったが、登場する人たちが魅力的で、インタビューは楽しくて面白かった。高校生向け人権講座セクシュアルマイノリティ入門の教材とのことで、素晴らしい教材だと思った。

 大槻は、本講座の冒頭に、フェミニストカウンセリングを女性が性差別のない社会を目指す立場で女性のために行うカウンセリングと定義したとき、もはや自明ではなくなった「女性」とは誰のことかが問われると指摘した。性別二元論とジェンダー規範・異性愛規範が強制されている社会に生きているからこそ、その規範との葛藤から生きづらさを感じてしまう人たちとともに闘うフェミニストカウンセリングの行く末は、ともに闘う人の多様性によって果てしない可能性を秘めている。そんな地点に私たちが立っていることを再確認できた講座になった。

シンポジストの桂木さん、小林さん、参加してくださった皆さんのおかげである。「本当にありがとう」と「これからもよろしく」という気持ちで一杯だ。皆さん、また、会いましょう!
(さかた ゆきこ ・WCKニュース第60号より転載)
by WCK-News | 2011-11-01 00:00 | WCK公開講座報告
ウィメンズカウンセリング京都 15周年記念シンポジウム(2010年9月12日実施)
隠されてきた「女性の貧困」
~ベーシック・インカムは希望になるのか~


今夏は例年にない猛暑に見舞われ、思わせぶりの涼風に期待を寄せる中、9月12日ウィメンズカウンセリング京都(以下WCK)設立15周年記念シンポジウムを、(財)京都市女性協会と共催で開催した。
 近年、日本社会を覆う閉塞感に「貧困」というキーワードを外すことは出来ない。グローバル化した情報と経済構造の大転換、これによる経済格差の問題、労働の規制緩和などの中で生み落とされてきた「貧困」問題。今回のシンポジウムでは「隠されてきた女性の貧困」の現実に焦点を当て、個人の問題ではなく社会の問題として押し返す力をためるためにその解決策と方向性をテーマに据えた。

◆ 女性の貧困はどのように隠されてきたか
 まず、WCK代表の井上摩耶子から、自身の働き方を振り返り、ジェンダー分析を交え、シンポの主旨について説明があった。70年代高度経済成長を支えてきた性別役割分業(男は外で働き、女は内で家事・育児)は、個人の選択による働き方=自己責任であるという考え方で一般化されてきた結果、女性の経済的自立を難しくしてきたこと。結婚生活が継続される事を前提に、時代の要請とはいえ無償労働を担わされてきた事実は、労働政策の誤りであったと指摘した。
 しんぐるまざあず・ふぉーらむ・京都代表の寺田まりこさんは、30年間子どもと自分を養うために、NOを言えない請け負いの仕事を強いられて来たが、「BI」があればもう少し人間らしい生活を送れたはず」と、ご自身の窮乏生活を語り、京都市「ひとり親家庭実態調査」や厚生労働省のさまざまなデータを使って、「シングルマザー」が置かれている生活実態を示し、女性の生涯にわたる多様な生き方に眼が届いていない国の政策、人権の置き去りを掘り起こされた。そして、改めて“ベーシック・インカム”(基本所得 / 以下BI)の実現に希望を託した。

◆ 「貧困」とベーシック・インカムの考え方
 次に「反貧困ネットワーク京都」事務局長の舟木浩弁護士は、生活保護問題を切り口に、ネットワークの設立、経緯、取り組みについて話された。社会の隅々に追いやられ、見えにくくなっている「貧困」の実情、生活保護をめぐる裁判から、構造的に「貧困」が生み出されている実態は、複合的な問題(DV、アルコール依存、精神疾患、無年金者etc)が絡まっており、幅広い支援活動と関係機関の連携強化が必要であると訴えられ、パーソナルサポート構想を明らかにされた。
 続いてシンポのメインテーマであるBIについて山森亨さん(同志社大学)から、パワーポイントを使って解説を受けた。BIが夢物語ではないことを(日本での実現はともかくとして)、先進国における家族関係社会支出の割合、家族給付の国際比較から説明し、憲法25条に触れながら、生存権の保障を欠いている現行の社会保障制度の機能不全を指摘された。「女性の人権」を求めてきたフェミニズム運動が女たちの共通課題として「家事労働に賃金を!」と訴えてきた(ダラ・コスタ著 1986年 インパクト出版会)のだが、あまねく生きとし生ける者の「基本所得」を求めてきた黒人運動(キング牧師の提唱)と、実はジェンダー平等を求めてきた女たちの運動とは地続きであったことを示唆された。
 日本におけるBI導入の実現可能性について会場から質問があった。現行のシステムを変えていくには、困難ではあるが、広く「貧困」の実態を可視化させ、生存権の保障を訴えていくことが重要であるという展望を得た。知らないことを望むことは出来ないが、BIという新たな社会保障に少し希望が生まれた。

(上野美代子・WCKニュース第56号より転載)
by WCK-News | 2010-12-01 00:00 | WCK公開講座報告
あらゆる性暴力をなくし、全ての被害者を支援する法整備を
                                         (2011年3月27日開催)

 WCK公開講座「性暴力禁止法をつくろうネットワーク全国縦断シンポジウムin京都」を、財団法人京都市女性協会との共催でウィングス京都を会場に開いた。北海道、広島、神戸に続く開催である。シンポジウムの第1部は高里鈴代さん(「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」・「強姦救援センター沖縄」代表)、近藤恵子さん (全国シェルターネット共同代表・「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」呼びかけ人)から問題提起を受け、周藤由美子から「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」の説明とアンケートへの協力を呼びかけた。第2部は「言わせてほしい、聞いてほしい」をテーマに性暴力被害当事者や支援に関わる団体からアピールを受けた。

 開会の冒頭、東北地方太平洋沖地震で被災された皆さんへのお見舞いと亡くなられた方々のご冥福を祈った。開会あいさつに立った井上摩耶子は、「大震災から2週間のこの時期に開催することに意味がある。DV被害者は、着の身着のままで加害者の元から逃げてきた自分を被災者の方々の姿に重ねている。こうした性暴力・DV被害当事者の思いをどう『「性暴力禁止法』に盛り込んでいくかを、皆さんと一緒に考えていきたい」と述べた。京都市女性協会の山本みどりさんからも共催のあいさつをいただいた。

◆ 沖縄における米軍による女性・子どもへの性暴力 
 高里鈴代さんは、日本の1%にも満たない土地に在日米軍基地の74%が集中する沖縄で「女性や子どもたちに何が起きてきたか、起きているか」についてパワーポイントを使いながら話された。
 1995年、米兵による少女強姦事件への憤りから「沈黙してはならない」と結成された基地・軍隊を許さない行動する女たちの会。彼女たちは沖縄の歴史を女性への暴力という視点から読み直す作業を始めた。米軍占領以降、新聞報道された米軍による暴力を拾い上げ、年表を作成し、被害女性たちの哀しみと憤りを記録していった。米軍占領下、生後9ヶ月の赤ちゃんをはじめ、あらゆる年代の女性や子どもがあらゆる場所で性暴力被害を受けていたことがわかったという。ベトナム戦争時代には毎年5~6人、性産業で働く女性が米兵によって絞め殺された。80年代初めから、米兵の貧困化が進み、「遊ぶ」金がない彼らは「一般の女性」をターゲットとするようになり、その傾向は今も続いている。
 高里さんたちは事件のたびに領事に抗議するも、領事は「軍は日本の法律で裁かれなかったこともしっかり裁いている」と言い放つそうだ。米軍だけでなく、日本の法制度への憤りを表明された高里さんは、加害者を罰し被害者を守る法律の必要性を訴えた。

 パープルダイヤルの実施結果と課題 
 近藤恵子さんからは、2月8日から3月27日の期間に内閣府が実施した「パープルダイヤル」についての中間的な報告を伺った。 内閣府が2009年に公表した暴力に関する調査では、7.3%の女性が性暴力被害を過去に受けたことがあると答えており、これを日本の成人女性に換算すると260万人に上る。しかし、昨年度の警察庁のまとめでは、1年に1400件程しか訴えられていない。以前から、近藤さんは被害を顕在化し、支援につなげたいという思いから、通話料無料で24時間対応可の電話相談を開設するよう国に要望してきたそうだ。
 「パープルダイヤル」には3月21日現在のトラフィックレポート(通信会社の記録)によると、女性相談で約2万7千件もの相談を受けた。近藤さんは「パープルダイヤル」を通して「過去の封印されていた性暴力被害を相談してくれる人たちが多かったし、後遺症の深刻さを痛感する」と話された。また今回の事業の特徴として、「付き添い支援」を組み込んだこと、「自分のことのように考えて一緒に動くネットワークの意義をあげ、女が寄ってたかればたいがいの事はできる」と力強く語られた。

◆ 性暴力被害の実態とかけ離れた現行法を変えよう
 第2部では京都だけでなく、滋賀、奈良、大阪から参加した11団体にアピールしていただいた。女性や子ども、男性やセクシャルマイノリティ、外国人に対する性暴力防止に取り組んでいる団体から、あらゆる性暴力をなくしたい、そのために法が必要という思いが語られ、熱気が会場を包んだ。神戸、大阪、浜松と続いた強姦裁判での無罪判決は「強姦神話」に基づくものであり、司法は性暴力被害の実態を理解していないとの批判もあった。
 最後に集会アピールを採択し終了した。カンパ額は24,079円でした。ご協力ありがとうございました。(福岡ともみ・WCKニュース第58号より転載)
by WCK-News | 2010-05-01 00:00 | WCK公開講座報告

フェミニズムの視点にたった女性のためのカウンセリングルーム、ウィメンズカウンセリング京都のスタッフブログです。最新の講座情報やスタッフの雑感などをお届けしています!


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