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想い出(3) ~知花さんの小説

☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」

次の日…の朝。
「露希ちゃ~ん!」
いつも通りにとてとて走ってくる芹佳。
「…芹佳」
わたしは言う。もう芹佳も気付いてるだろうな。
「あのさ、昨日のプレゼント、あれ、わたし達同じもの渡したっぽくない? やっぱ芹佳もナガフジデパートで?」
「そうそう! 500円ポッキリでいろんな文具が入ってるセット買ったの! あれ、超お得なんだよね!」
たしかに得だ。でも、わたしが買った時は税込みで525円だった(細かい?)。
「…ところでさ、露希ちゃん、猫好きになったの?」
ぱちくり。何度もまばたきして芹佳を見る。芹佳なら知ってるはずなのに、どうしてこんなこと聞いてくんの?
「芹佳! なにふざけてんの! わたしが猫を好きになるわけないでしょ!」
だから、つい強気口調で言ってしまう。
「…そうだよね。…じゃあおかしくない? どうしてそこに猫がいるのに無反応なの?」
“え? ”背筋が凍ったのを感じながらゆっくりと足元を見る。
そこには、たしかに猫がいた。ノラには見えない綺麗な猫だ。毛並みは白く、金色の鈴の付いた首輪を付け、愛くるしい瞳をしてわたしを見ている。耳も白いがほのかにピンク色がぼやけて見える。わたしはこの淡い感じの色が少し好きだ。でも、わたしとしてはもう少し色があった方がいいと思う。
って、色について語ってる場合じゃない。猫。猫…。
「ぎぃゃぁぁ~!!!」
わたしの叫びに周りの人達が驚いた表情を見せる。でも、わたしはそれどころじゃない。慌てて芹佳が猫を抱き上げる。
「きゃ~ん! 可愛いぃ~~。…もー。露希ちゃんてば、なんでこんな可愛い猫ちゃんを怖がっちゃうの~? 全然怖くないのにー。あっ、この仔小猫ちゃんだ~。ほら、この小さい手! 幼い証! きゃっ、見て、目ぇ掻いてる! や~ん、もうほんと可愛い~! 可愛いすぎる~~~っ!!!」
これのどこが可愛いって? 芹佳の気が知れない。それに、幼いって…あんたも子供のくせに。
「ちょっと、芹佳! いつまでそんな猫抱いてる気? 早くもとあった場所に帰して来なよ」
猫と目を合わせないように、必死にビビってないふりをする。
「露希ちゃんてば…そう言いながら後ずさりなんかしてどーすんの。猫って可愛いよ~。露希ちゃんの猫嫌い…いや動物嫌い、なんとかして克服しよ?」
な、な、な! この人は笑顔でなにを言ってるんだ!? あんたは悪魔の化身か!?
「なに言ってんの! 悪魔の囁きみたいなこと言わないでよー。あ、そだ。悪魔といえば、わたし今日クロスのペンダントしてるんだよ。気付いてた? あと、ブレスも☆ これもクロスなの。ついでにナガフジで半額だったイヤリング♪」
髪を掻き揚げて芹佳にイヤリングを見せつける。可愛いでしょ?
「?」
芹佳は理解できなかったのか、首を傾げてわたしを見ている。
「…ちょっと~。これ、クロスよ? 十字架だよ? なんで見てて平気なの。もっとビビりなさいよ。怖がりなさいよ。…(わたしみたいに)後ずさりしなよ!」
そう言いながら、じりじりと芹佳に近付いていく。
「???」
それでもやっぱり芹佳の顔には分からないと書いてある。…なんで分かんないの? ここまで言ってんのに。
「あ!」
なんか分かった。もしかしたら芹佳、クロスがなにか知らないんじゃない? 十字架のこと、よく知らないんだよ!
「ふっふ~ん。なんだ、そいうこと? しょーがないな~。仕方ないから、この露希教授が教えてあげよう! ええと、クロスって言うのは、『+』みたいなもので…って、意味は全然違うんだけどね。で、そのクロスがなんなのかって言うと~、これは悪魔が怖がるもので…」
「もしかして…」
芹佳が小さくわたしを遮って話し出す。
「もしかして露希ちゃん、悪魔と吸血鬼、間違えてる?」
「へ…?」
悪魔? 吸血鬼?
「だって悪魔が苦手なものってわたしが知る限り存在しないし、クロス怖がるのって吸血鬼だし…。単純な考えだけど、悪魔と吸血鬼がごちゃ混ぜになっちゃってるのかなって。…あ、でも露希ちゃんならそんなことないよね。こんなことミスらないよね。…わざとだよね。…さっきの悪魔って、わざと言ったんだよね?」
芹佳が急に早口になった。…悪魔。吸血鬼。
「…」
返す言葉を必死に探していると、どこからか『ポチー! ポチー!』と飼い犬を捜している声が聞こえてきた。
「わんちゃん、いなくなっちゃったのかな? わたし、犬探し手伝ってくる!」
猫をその手に芹佳は走り出す。
「待ってっ! わたしも行くっ!」
わたしは後を追うように芹佳に続いて走り出した。

やだやだ。待って、先に走ってっちゃわないで。一人で進まないで。
…あの日の記憶が甦る。


覚えてるかな? 小学校の時。あの頃の芹佳も今みたいに困ってる人を見捨てられなかったんだよね。バスや電車では必ず席を譲り(正直譲るくらいなら最初から座ってなきゃいいのにとしょっちゅう思っていたが)、道に迷っている人を見れば、聞かれる前に自分からその人のもとへ行き道を教え(アメニモマケズ調?)、コンタクトを落とした人がいればいつも一緒に腰を落として捜してた。…芹佳って昔からそういうことが平気でできる子だったよね。まだ幼くて(つっても同い年だけど)、自分のすることにすら疑問を感じていたわたしには、そんな芹佳が眩しくて、ただただ凄かった。芹佳の行動を指をくわえて見ていることしかできなかった。なにもできないでいつも陰で泣いていた(今のわたしからはそんな時代があったなんて思いもよらないだろうけど)。
あの頃の芹佳は男女問わず年齢問わず誰からも好かれていた。人気者だった。近づくスキなんてなかった。…わたしって変わったよね。今はそんなにも憧れてた芹佳が近くにいて、今わたしに心を開いてくれてる。


憧れていたといえばもう一人。また違った憧れを持った人がいた。
その子の名前は乙ちゃん。わたしに変わるきっかけをくれた人だ。

『露ちゃんは優しいね。あなたは世界にたった一人の露ちゃんだよ』

乙ちゃんは、ずっとわたしのそばにいてくれた。寂しいなって思ったらいつも近くにあの子の後ろ姿があった。一緒に遊ぼって、ずっとずっと言って欲しかった言葉で誘ってくれて、遊んでくれて、仲良くしてくれたの。
わたしの中の乙ちゃんの存在はとても大きい。乙ちゃんがいたから、わたしは今のわたしでいられるんだ。だってあの日、乙女ちゃんはね…。

つづく
by wck-news | 2011-07-03 00:00 | 知花さんの小説『想い出』

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