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『心の音』(7)~知花さんのエッセイ

☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
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藍色の瞳

藍色の瞳。あの子が笑う。だから、わたしは生きている。偽善者と呼ばれようと、あの子が生きている限りわたしはあの子の影となる。それが、わたしがあの子にできる唯一の恩返し。あなたを一生かけてお守りします。命に代えても。…今此処でお誓い申し上げます。

良い子じゃないです。良い子なら、嫉妬したりなんかしません。恨んだりしません。憎んだりしません。あんなに相手を責めたりしません。

表面上のわたしを見て、良い子だと思ったのなら、それは勘違いです。忘れて下さい。

本当のわたしは悪い子です。差し伸べられた手を振り払い、それどころかその行為を無駄にするように全否定。もう一度あの日に戻れたら…。
どうぞ地獄に奈落、どこへでも。

誉めないで。どうしていいか分からなくなる。また調子に乗ってしまう。
馬鹿みたい。いや、馬鹿だ。嬉しいのに素直に喜べなくて、そんなところ見せたくなくて。

…理由なんかあるのかな。

前は、どうしてたんだろ…。

誰も悪くない。悪いのは、みんなわたし。ごめんなさい。弱くてごめんなさい。頼ってばかりでごめんなさい。ひとりでいられなくてごめんなさい。ごめんなさい…。

この手に浮かぶ無数の傷痕。これは、勲章ですか? それともただの自分虐(いじ)め?

陰口叩かれる日々に疲れ、もうどこかへ行ってしまいたい。

こんなに広い世界なのに、どこへ行っても人はみんな悪口ばかり。みんな同じに見えてきました。
…ここが嫌になっても死ぬる勇気さえなく、ずるずると生きてきました。
ねぇ、在りし日のわたし。幸せってなんなんだろうね。あの時のあなたは幸せでしたか? 今は幸せですか?

あの頃は幸せとかよく分からなくて、でもそうじゃないとは言えなくて、だから笑顔で頷いてました。考える暇などなく。
幸せじゃないなんて言ったら、それまでの自分とか下手したら家族までも否定してしまうような気がして言えませんでした。
余計なことばかり考えて、一番欲しいものからはずっと目を逸らしてます。どうでもいいことに一生懸命で、あなたはいつも後回し。…ごめんね。
わたしには、一生『幸せ』が分からないような気がします。

ねぇ。勝手な妄想ばかりしないで。変に膨らませたりしないで。傷は消えても実はまだ隠れてるんです。見えない痛み、残ってるんです。

『もう大丈夫』。
決め付けないで。まだ平気じゃない。怖くてたまらない。あなたに見せてるわたしだけがすべてじゃない。あなたの中のわたしは、そんな小さいものですか。

まだまだ。こんなところで終わりたくない。負け犬人生なんて願い下げ。

わたしが守ったのは、この誇り。いつも完璧でいると言う守れない誓い。無駄なくらい堅い覚悟。
残すは、何度も砕かれたこの自尊心。
笑顔でいられる為にすべてを押し付け、大切なモノすら預け、還ることを拒まれ、今手元に在るのはこのちっぽけなプライドのみ…。

今度破られたら本当に終わってしまうような気がするから。
だから、いつも以上にふたをする。心とか感情を見えないようにして、嘘で飾った言葉を吐(は)く。…美しい嘘を吐(つ)く。

まだ見えてないもの、あるんじゃないの?

それで満足なんですか? 構いませんけど。わたしはそんなに小さくないです。あなたの考えるほど弱いものじゃないです。

あれ…?

なんだか怖くなってきました。ごめんなさい。わたし、逃げていいですか? 自己保身してもいいですか?

一度考えました。人を信じてみようかなって。だけど、やっぱり無理のようです。いじけてるわけじゃない。自分の力量を読み間違えていたんです。ただの勘違い。場違いな間違い。

一見仲良く見えても皮を剥(は)がせば言いたい放題。

ひとりが怖いと言いながら、ひとりになって安心しているわたしがいます。矛盾しているわたしです。でも、どっちも本当なんです。

どうしよう。泣きそう…。

捨てたはずの殻。また覆(おお)いたくなりました。閉じ込もりたいです。人間界は、怖いです。偽善者ばかり。嘘ばっかり。嘘を吐くならなにもしないでよ。できないこと言わないでよ。救うなんて嘘、ひどすぎるよ…。

わたしが悪かった? ちゃんと言ってたらよかった? そうしたらどうなってた? 今ほど居づらい場所じゃなかった?
でも、もう遅いじゃないですか。もう手遅れなんでしょ? 分かってるよ…。

責めないで下さい。死ぬほど後悔してますから。

もう誰も、疑いたくないよ…。

嫉妬したくない。誰も憎みたくない。嫌うのって、疲れるんです。憎悪って、たくさんエネルギー盗(と)られるんです。
知ってますか? わたしはもう、人間じゃない。人間のふりをした、人間になろうとしていたモノ。

できなかった。わたしがなりたかったのは、こんなんじゃない。こんな最低最悪な存在じゃない。こんな汚れた世界で生きているモノじゃなかった…。

わたしが求めたのは、もっと綺麗で美しくて、人間らしいモノ。そうありたかった。完璧でいたかった。そうすれば、わたしがそこにいてもいい気がして…。

もはや、求めることすら許されませんか…。

心境の変化。
いつから? 自分勝手、自己中心的。なにがどうしてこうなりましたか。いいえ、それとも元からわたしはこんな人間だったのでしょうか…。

一番大切なのは、自分。大事な自分の為、自分を守る為。

相手を傷つける。

『誰かを守りたい。』

そう言って剣を手に取り闘いを挑んだ。

誰よりも大切なあの子の為。誰よりも好きで嫌いなあの子。憎くて羨ましくてずるくて優しくて。
…一番愛しい。

そんなあの子は今も笑顔。誰からも愛されるけれど、彼女の世界に真実はない。

涙流しすぎ、いつしかあの子は藍色の瞳。

本当に綺麗な目だったのに。なにもかも見透かすほど透明な輝きを放っていたのに。

「生涯あなたをお守りします。」

わたしの言葉に、彼女は優しく微笑んだ。それは、悲痛なまでに美しい笑顔。

嘘だと知っていながら、その人を許し、ただ温かい笑顔を向けてくれる。それが彼女の…藍色の瞳を持つ少女の最後の優しさ。

わたしは、あなたすら守れなくて、あなたを藍色に染めてしまった。それだけじゃない。わたしの弱さのせいであなたを血色に塗り替え、その上からまたあなたを傷つけ、今尚許しを請うている…。

あの子を守る。だから、あわよくばついでにわたしも…。

半端な覚悟。本当に大切なモノを見捨て、嘘で飾られたモノを必死に守ろうとする。美しく悲しい忠誠心。

…ねぇ。…それでいいの…?

それは本当は誰も守れていない。残されたプライドも藍色の瞳も。そこにはもう冷たい涙と暗い嘘。

最後の砦には、もう誰もいません…。

わたしが見たかった世界。振り返ってももうなにも残ってなくて、跡に残るは荒れ果てた廃墟と荒(すさ)んだ心。そして、藍色の瞳。

この闘いで、誰が得をしたのですか…?

その人は、わたし達を駒にしたのですか…?

使い道がなくなった駒は、廃棄されるんですか…?

あの子はどこ? いつか出会える? 今生、この世で会えますか? ゴミ箱ででも会えますか?

…ならいっそ、棄てて下さい…。

最後にあの子に会いたい…。

まだなにも伝えられてないよ…。

次会えたら今度は必ず言う。もう会えないかもしれないから。ずいぶん遠回りしてきたけど、これがわたしの本当の気持ち。あの子に一度も言ってなかった。

ねぇ。今泣いているの? 藍色の瞳を瞬(まばた)かせているの?
いつものように笑ってよ。大丈夫って言ってよ。そうしたら、絶対に言うから。最初で最後の大告白。君に届くように伝えます。声を振り絞って、遠くを見るその藍色の瞳にも映るように。

大好き って。

あいたいよ…。

今どこにいるの?誰と居るの? なにしてるの? あなたの笑顔は誰に向けられているの? わたしは誰の為に生きたらいいの…?

「…  …!」

この声が、遥か遠くに居るあなたに届くように。
永年の責務から解放されました。あなたもわたしももう無関係。どこかで息をするあなたが、ただ穏やかに過ごせますように。息を殺すような生き方は、もうして欲しくない。少しでも、報われますように。涙を流した以上の笑顔がこぼれますように。

自由に空を飛び交うあの小鳥達。あんな風に、楽しそうに地を駈けるあの子供達のように。川から海へ流れる小さな泡のように。
…太陽のような明るい笑顔を向けているあの子のように。

「…  …!」


THE END
by wck-news | 2011-08-10 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』

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