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『想い出』(7)~知花さんの小説

☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」

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わたし達は病院近くにある所要時間1分のとある小さな公園へやって来た。一部芝生が生えているところがあったのでわたし達はそこに座った。
「へぇ~、病院の近くにこんなところがあったんだ~。わたし、全然気付かなかったよ!」
露希ちゃんが悔しそうにしている。それもそのはず。この公園はまさに病院の裏にあったのだから。
「いいところでしょ? ここ。静かだし、春になると桜も開花してくれるのよ。それなのに意外と知られてないの。絶好の穴場よね。4月には、病院仲間とお花見したりなんてこともできるし」
「そうなんだ。ほんといい場所だねー。わたしもこれからはここでお花見しようかな♪」
ふわふわり、優しく吹き抜ける風が心地好い。ツインの髪どめも気を抜いたら飛んでってしまいそうだ。
「うん、わたしも賛成!」
「って、露希ちゃんは花より団子でしょ。お花見より食べ物が目的なんでしょー」
「さ、さすが…」
パチパチ、目を細めながら露希ちゃんが小さく拍手してくれる。
「だって、心友歴もう7年だもん」
そう言いつつもどうしても驕りは隠せずふくらむ小鼻を隠そうとわたしは緩く咳込んでみた。
「それで、結理恵ちゃんの件はどうするの?」
よかった、希美花ちゃんが話を続けてくれたお陰で全く気付かれなかったや。
「せっかく芹佳と話してるっていうのに、希美花ちゃんてばー。久々なんだからもうちょっとくらい待ってくれたっていーじゃない」
ブツブツ文句を言うもののなぜか弱気な露希ちゃん。
「だってあなた達が話し終わるのを待っていたら、日が暮れそうなんだもの」
容赦なく切り込む希美花ちゃん。希美花ちゃんてばキャラ変わってない?
「それはあるかも…でもさーそれもこれも全部芹佳のせいなんだよ?  だって一週間も時間があったのに芹佳一度もお見舞い来てくんないし。一回でも会いに来てくれてればわたしだってあんなにペチャクチャ喋ることなかったんだよ」
露希ちゃん…忘れかけてたのに凄く嫌味なこと言うなー。
「だーかーらー、それは悪かったって言ってるでしょ。 病院で会った時ちゃんと謝ったじゃない。それに、その後露希ちゃんの買い物にも(押し付けられて)行ったし」
「あーっ! なんかどっか押し付けがましい! なんか自分がしてやった! みたいな感じ~!」
「失礼な! そんなこと思ってないよッ! てゆーかどの口が言うわけ?  そもそも買い物押し付けたのは露希ちゃんでしょ!」
「やっぱりそんな風に思ってたんだ!  ならあの時断ればよかったのに!  どうして断らなかったの!?」
「どうしてって、あの時露希ちゃんがわたしの意見も聞かずに背中グイグイ押してくから言う暇なかったんじゃない!  そんなの言えるわけないじゃんか! それなのにどう言えって!?」
「んなのいくらでも手段あんじゃん。わたしなら理不尽なことには絶対口を出すね」
わたし達の喧嘩は留まることを知らずますます激しさを増していく。
「二人共、口論してる場合?  なにより今は結理恵ちゃんのことでしょう!? まったくいつもいつも二人は話が逸れていっちゃうのね」
とうとう見兼ねた希美花ちゃんが止めに入った。
「言っとくけど、それはわたしが悪いんじゃないよ。 いっつも芹佳から突っ掛かってくるんだよ」
「はいはい、あなたの言い分は分かったから。とりあえず一時停戦しなさい。そうしないと話し合いしようにもできないでしょうよ」
露希ちゃんはわたしと目を合わせようとしない。喧嘩してわたしにすべての責任吹っかけた手前、今更…とでも思っているのだろうか。それならと、わたしも露希ちゃんから視線を逸らした。
「…また意地の張り合い?」
ふっと希美花ちゃんが溜め息を吐く。
…わたしが悪いんだよね。わたしは相手が誰であれ元々よく喋るのに、つまんないプライドで芹佳のせいにしちゃったから。きっとわたしが謝れば芹佳は笑って許してくれる。でも、どう切り出したらいいのか分からない。どうやって謝ったらいいのか分からない。芹佳、怒ってるかな…怖くて芹佳と目が合わせられない。もう、わたしの弱虫!
「…もう今日は無理ね。いいわ、今日はこれっきり、お開きにしましょ。一度よく頭を冷やした方がいいわよ、二人共」
そんなわけで会話もままならないままわたし達は沈黙の時間を共有しながら長い一分を耐え抜き病院へ戻ってきた。
「じゃ…わたし、帰るね。…露希ちゃん…お大事に」
「…うん」
そしてそそくさと芹佳は自宅へ向かい、わたしは落ち込んだままベッドへ潜り込んだ。
「露希お姉ちゃん…」
いつの間にか眠っていたらしい。細い幼い声に目を覚まし飛び起きると、結理恵が病室のドアから顔を覗かせていた。
「結理恵…どうしたの?  もしかしてプリント終わった?  あ、ならこれ次の…」
そばにあったファイルから乱雑に一枚を取り出す。
「違うの違うの、まだそれはできてないんだけどね、難しくて」
「あ…そか、結理恵レベルアップしたもんね、分かんなかったら聞きにおいで。お姉ちゃん、教えたげるから」
「あっ、ありがと」
そう言うと結理恵は一度床に視線を落とし、それから柔らかな目でわたしを見た。
「…でね、今日ここに来たのはね…」
「なに?」
微笑んでみせると結理恵は緊張を解いたように笑うとこう言った。
「あの…お話、終わった?」
「あ…」
言われて我に返った気分になった。そうだ、そのために今日わたし達はあそこに行ったのに。
「ごめん、それがまだなんだ…ごめんね」
「そっか」
「明日にはきっと結理恵に話すから。だからそれまで待っててくれる?」
「うん。じゃあ、お話が終わったらわたしの部屋に来て?  わたしから会いに行くと邪魔になるかもしれないから。露希お姉ちゃんが報告してくれるまで、わたしなにもしないことにする。よろしくね、じゃあね、おやすみなさい」
言い切ると返事も聞かず結理恵はさっと反転してドアを閉めた。耳を澄ますといつものおばちゃんが消灯時間を連呼しながら歩く音が院内に静かに響いている。そうか、もうそんな時間だったのか…。時計を見てわたしは理解する。
「明日になったら…ちゃんと仲直りするからね…」
来たる明日まであと約2時間。それまでゆっくり眠れ、かわいい子羊。
by WCK-News | 2012-02-09 00:00 | 知花さんの小説『想い出』

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