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『想い出』(8)~知花さんの小説

☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」

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翌日。
「おはよー。露希ちゃん!」
昨日のことなんてなかったかのように、明るくわたしに話しかける芹佳。わたしは驚いて言葉が出なかった。
「…どうしたの?」
芹佳が首を傾げる。「ううん。なんでもない。…おはよう。」
…芹佳って凄いなー。わたしは、今日芹佳に会ったら、なんて言おうか。どんな態度をとったらいいのか考えていたのに、芹佳はそんなこと考えずに水に流した感じで話しかけてきた。怒ってないの?…わたしにはとても出来ない。
「今日、学校はどうしたの?」
「やだな~。今日は土曜日だよ?学校は休みじゃん!」
「あ、そっか。」
…昨日、一晩中考えていた。明日、露希ちゃんにどんな調子で話しかけたらいいのか。いっそのこと、明日はお見舞いに行かないでおこうか。そんなことも考えたけれど、なんだかそれは卑怯な気がした。それに、結理恵ちゃんに話を聞かれてしまったのはわたしのせいなのに、喧嘩しただけで逃げ出すなんてことしたら、結理恵ちゃんに顔向け出来ない。そして考えた末、わたしは何事もなかったかのように話しかけることにした。わたしには、昨日のことを引きずって重い空気のまま会話を始めることなんて出来ない。昨日のことをなかったことにするなんて、ずるいことかもしれない。でも、わたしにはこの方法しかなかったの。
「露希ちゃ~ん。親御さんから預かったもの持って来たわよー。…って、あら、芹佳ちゃん。」
今日の希美花ちゃんが手に持っているのは、鞄だ。それも、露希ちゃんのお気に入りの大きな鞄。
「こんにちは。」
「芹佳ちゃんが来てるってことは…もしかして、もう仲直りしたの?良かったー!」
「…えと…一応…仲直り…しました。」
そうであって欲しいなーと思いながら答える。露希ちゃんが『仲直りなんてしてない!』と言わないように願いつつ。けれど、露希ちゃんはなにも言わなかった。
「そうなの?安心したわ。そうそう、露希ちゃん。はい、これ。」
その鞄はベッドの側にある椅子の上に置かれた。
「ありがとう!希美花ちゃん。」
露希ちゃんはとても嬉しそうだ。
「なにもらったの?」
そうわたしが訊ねると、
「えへへー。見て!」
露希ちゃんが鞄のチャックを開け、中から取り出したのは…漫画だった。
「…漫画~?」
拍子抜け。もっといいものが入っているのかと思っていたのに。がっかり…。
「…なんか不満げだね。」
「そりゃそうだよ。いいものを期待したのに、中身が漫画だったなんて。」
「悪かったね。わたしは漫画が好きなのよ!芹佳だって知ってるでしょ? なんならわたしのこと、漫画博士って呼んでくれてもいいから!」
漫画博士って…。露希ちゃん、やけくそですね…。
「それに、病院って暇なんだよ? ちょっと前までは結理恵や都絆菜が来ていたけど、結理恵は話し合いが終わるまで来ないつもりらしいし、都絆菜とは喧嘩しちゃってるから来ないし、唯一の話し相手である希美花ちゃんは、仕事が忙しいからなかなか遊びに来てくれないし。」
「そっか…。それはそうだね。ごめん。それに露希ちゃん、漫画大好きだもんね。漫画が友達と言ってもいいくらい!」
「そうそう!だから、わたしのこと漫画博士って呼んでもいいよ?」
…呼ばれたいの…? 露希ちゃん…。
「あ、で、でも、漫画より芹佳の方が大事だよ?芹佳はわたしの心友だし。漫画はただの友達。」
慌てて弁解する露希ちゃん。わたし、こんな露希ちゃんがけっこう好きなんだよね。露希ちゃんが慌てると、面白いの。
「分かってるよ。わたしも露希ちゃんのことは、大切な心友だと思ってる。」
「わ~い。嬉しい!」
今度は喜んだ。単純と言うか無邪気と言うか…。コロコロ表情が変わるなぁ。
「じゃ、一段落ついたところで、再び結理恵ちゃんについて話し合うとしますか!」
ナイスなタイミングで希美花ちゃんが口を挟む。
「そだね。わたしも、どうしたらいいか昨日ちょこっと考えたんだけど、いい案が浮かばなくてさー。芹佳。なんかいい案ない?」
露希ちゃんてば人任せだなー。でも、それってわたしのこと信じてくれてるってことだよね。だから、わたしの意見を聞こうとしてくれているんだよね。嬉しいな…。ありがとう。口に出しては言えないけど、感謝してる。
「…あんまり思い付かないなー。…いっそのこと、本当のことを話したらどう?小学生の頃は大抵みんな素直で、今が1番純粋な時期だから、嘘なんかついたら綺麗な心を汚してしまう。子供が純粋のまま育つかどうかは、小学生の時に決まる。それに、純粋な子供には嘘なんか通用しない。子供は、大人が思っているより大人で、大人は大人が思っているより子供。子供は子供なりに真実を求め、知ろうとしている。だから、真実を知っていることが多々ある。そんな大人な子供に嘘は通用しない。だから、嘘をつくより正直に真実を話した方がいい。…って、希美花ちゃんのお母さんが言ってたよ。」
さっきまでは真剣だった露希ちゃんの表情が、わたしの話が終わると同時に力が抜けて、いつものふにゃっとした顔に戻った(悪い意味で言ったんじゃないよ!? 悪気はないから!
分かりやすく解説しただけ!)。
「なんだ~。わたし、芹佳の考えかと思っちゃった!真面目な顔して言うんだもん。不安になっちゃったよ~。あ~、良かった。いつもの芹佳だ。」
露希ちゃんが安心したように、ほっと胸を撫で下ろす。
「露希ちゃんも、いつもの露希ちゃんだよ。」
露希ちゃんに真面目な顔は似合わない。わたしは、いつも通りふざけるのが好きだけど、温かい優しさを持っていて、相談に真剣にのってくれる露希ちゃんが好き。露希ちゃんに励まされると、なぜか安心するし、勇気が出る。わたしもいつか、露希ちゃんみたいに人から頼られるような人になりたいな。なれたらいいな。
「え~?いつものわたしってどんなの~?」
露希ちゃんが首を捻る。
「内緒っ。」
いつか教えるよ。わたしが、露希ちゃんみたいになれたら。そしたら、実は露希ちゃんに憧れていたって言おうかな。あの頃の露希ちゃんに救われていたって。
「芹佳ー! ギブする! だから教えてよー!!!」
必死な露希ちゃん。だけど、わたしに教える気はないよ。悪いけど。もう少し。あと何年か待って。そうしたら、きっと露希ちゃんにすべて話すよ。だから、露希ちゃんも今のままでいてね。変わらないでね。ふざけることが日課だけど、相談(聞く専門)上手な露希ちゃんのままでいてね。わたしが大人になってからも、きっとまだまだ露希ちゃんに相談に乗って欲しいことがあるはずだから…その時はよろしくね。露希ちゃん。
「…そろそろ話し合いに戻っていいかな?」
希美花ちゃんだ。彼女の言葉で、はっと我に返った。希美花ちゃんがいたの忘れてた…。わたし達、いつものように、2人だけしかいないかのように話してしまっていた。
「…でも、良かったわね。」
希美花ちゃんが微笑んで言う。
「なにが?」
「だって、昨日は大喧嘩をしていたのに、1日経っただけで、もう仲直り。心友には『ごめん』なんて言葉いらないのね。」
…てゆーかわたしが喧嘩をなかったことにしちゃったからなー…。
「そうなの!わたし達くらいいつも一緒にいると、相手の考えてること分かるの!」
それには同意出来る。わたしにも、なんとなく露希ちゃんの考えてることが分かるし。ちょこっとだけね。
「…ってなわけで、今回の話し合いは終了~☆」
突然露希ちゃんが話し合いを終えてしまった。
「え、終了って? なに勝手なことしてんの! まだ話し合い終わってないよ!?」
「え?終わったんじゃないの? だって、みんな芹佳の意見に反対出来ないし。嘘をつくより本当のことを言った方がいいしね☆」
でも、これで決定にしちゃっていいの? 今回の話し合いって、わたしが意見を言っただけじゃん…。そんなの話し合いじゃないよ!!
「言われてみればそれもそうねぇ。よし!じゃ、芹佳ちゃんの意見を採用しましょう。決定ね!」
って、希美花ちゃんまで賛成なの!? しかも断定しないで~!
「うん! 決定! 決定!」
えっ…ちょっ…。
「ちょっと待ってよ!たしかにわたしの意見もいいと思うけど(さらっと自慢?)、他の考えもあるんじゃない?だって、チーコちゃんがもうすぐいなくなっちゃうなんて知ったら、きっと結理恵ちゃんも都絆菜ちゃんも傷付くだろうし…。」
by WCK-News | 2012-04-11 00:00 | 知花さんの小説『想い出』

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