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『想い出』(9)~知花さんの小説

「あ、それ。でもね、嘘ついても、どの道チーコちゃんは退院するでしょ? だったら嘘ついてもしょうがないじゃない。…ってことに、さっき気付いたのよ。」
「そーそー!わたしも、さっきそれに気付いたの。」
わ…忘れてた…。そっか。どんな嘘をついても、やっぱりチーコちゃんは退院しちゃうんだ…。
「…でも!本当のことを話すよりも、2人を傷付けない良い方法があるよ!きっと!ほら、例えば…」
結局、わたしはどうしたいんだろう。本当のことを言うべきなの? それとも、嘘をつく方がいいの?
「例えば?」
露希ちゃんと希美花ちゃんが声を揃えてわたしに訊ねる。
「えっと…あの…その…。」
「ほら~。だから言ったじゃん。見つからないでしょ?」
「…うん…」
「やっぱり、どんな時でも嘘はついちゃいけないんだよ。結局、正直が1番ってことだよね!」
ほんとにね。今日、それを思い知ったわたしでした…。

…でも、そんなに嘘っていけないことかな。だめなことかな。真実を話したら、相手が傷付くことが分かっているんだから、時には嘘をつくことも必要なんじゃないのかな。
わたしはそう思ったけれど、結理恵ちゃんに真実を話す気満々で、緊張して心の準備をしている2人にそんなことは言えなくて、その言葉は自分の胸にしまっておくことにしました…(あとでふと思ったんだけど、心の準備って聞く相手がするもんだよね…。間違えちゃった!)。



「あ! そう言えば!」
突然露希ちゃんが大声をあげた。
「なーに? 露希ちゃん。予告もなしに大声出さないでよ…。」
つい肩が震えちゃったじゃない。
「いや、予告ができるくらいなら大声とか出さないし…。」
たしかに。正論ですね。
「それもそうか…」
わたしが納得したことに、満足の笑みを浮かべる露希ちゃん。
「…って、そうじゃなくて!」
「じゃ、どうなの?」
「銅だよ!…だーかーらー! なにふざけてんだ、わたし~!」
…。今の露希ちゃん、なにがしたかったの? 『銅だよ!』ってなに? なんなの!? ギャグ!?どこかに笑うところがあったの!? …わたしは、今頃後悔しました。『どうなの?』なんて聞かなきゃよかった…。あああああ…。また話がズレていく…。
「それにしても、結理恵ちゃん、なかなか来ないわねー。」
希美花ちゃんの一言で、露希ちゃんは元に戻った。希美花ちゃん、感謝!
「そうそう。さっきからそのこと言おうと思ってたの。あのさ、さっき思い出したんだけど、結理恵、ここに来る気ないらしいよ?」
「ええ~!?」
「嘘~!!!!!」
わたしの言葉に2人(芹佳と希美花ちゃん)はパニック。
「な、な、な~!てことは、もうわたし達に愛想が尽きて、チーコちゃんのことを都絆菜ちゃんに話しに行っちゃったの~!?」
こっちは芹佳。
「それか待ちくたびれたとか!? どっちにしろ大変じゃない!急いで止めなきゃ!」
こっちは希美花ちゃん。
「馬鹿!なに言ってんの! 待ってよ!てか落ち着いてっ!」
え…?露希ちゃんの言葉を聞いて、わたしは正気に戻った。もちろん、『落ち着いて!』と言われて落ち着いたわけではない。いつもふざけている露希ちゃんが、今回は『餅ついて!』じゃなく、『落ち着いて!』と言ったからだ。嬉しい!露希ちゃんも、真面目に止めようと思ってくれたんだ! 感激~!
わたしは、その喜びで慌てるのをおさまれた。
「あ、間違えた。餅ついて!だった」
…所詮、露希ちゃんは露希ちゃんか…。落胆しました。
「それはそうと、結理恵、ここに来ないらしいよ?自分が来たら話し合いの邪魔になるから、わたし達が来るのを待ってるって言ってた。」
「露希ちゃんてば! それを早く言ってよ~」
「…じゃ、今から行く?」
「うん!いいね!そうしよう! 今すぐ行こう!」

「結理恵!」
「…露希お姉ちゃん…と、えと…芹佳さん?」
偉い! 結理恵ちゃん、わたしのこと、さん付けで呼んでる!さすが!ちなみに希美花ちゃんは、『仕事です!』と婦長さんに言われて仕方なく仕事に戻った。
「長い間待たせちゃったけど…今から話すよ。えーと…都絆菜は?都絆菜も呼んで来る?」
「うんっ。今、都絆菜ちゃん、おトイレに行ってるの。呼んで来るね!」
ほんと可愛いなぁ…。結理恵ちゃん。素直で、無邪気で…。

「お待たせ!呼んで来たよ!」
しばらくして、結理恵ちゃんが帰って来た。隣には都絆菜ちゃんもいる。けれど…ムスッとしている。
「どーしたのさー、都絆菜ー。そんな顔してたら幸せが飛んでっちゃうよー。」
「…あたし、露希、嫌いだもん。」
ああ…そっか。露希ちゃん、都絆菜ちゃんの意見に反対してるもんね。そして、都絆菜ちゃんは真相を知らないんだもんね。
「ねぇ、都絆菜ちゃん。ちょっと聞いて。露希ちゃんはね、都絆菜ちゃんにいじわるしてるんじゃないの。ちゃんとした理由(わけ)があるの。」
「理由?」
都絆菜ちゃんがびっくりして聞き返すと、露希ちゃんが一歩前に出て話し始めた。
「そうそう。単刀直入に言います! 結理恵はもう知ってるかもだけど、チーコは14日に退院するの。つまり、いなくなっちゃうの。」
「え…。14日?じゃあ…じゃあ、誕生月パーティーできないじゃん…」
俯く都絆菜ちゃん。結理恵ちゃんも、悲しそうだった。
「そっか…。だから露希、あたしの案に反対したんだ…」
「…うん」
「そっか。退院するんだ。寂しいな…」
「あのね、都絆菜ちゃん。たしかにチーコちゃんはいなくなっちゃうけど、それは嬉しいことなんだよ。悪いヤツをやっつけたんだから!」
「…病気が治ったんでしょ?」
冷たい目で見る都絆菜ちゃん。
「…はい、その通りです」
がーん。知ってるのかぁ。小学生も分かってるんだなぁ。…わたし、なんか恥かいた…?
「…そのくらい知ってるよ。あたし、もう子供じゃないんだからね」
…子供じゃない…か…。たしかにわたしも子供扱いされるのは嫌だった。
「やだよぉ…。ちーちゃんがいなくなるなんてやだよぉ」
泣き出す結理恵ちゃん。
「なにさ!結理恵、こんなので泣くなんて情けない! あたしは全然悲しくなんかないんだから!」
「…都絆菜。素直になんなよ」
露希ちゃんの一言で、都絆菜ちゃんの顔が歪んだ。泣くのを我慢している。
「露希の馬鹿っ!」
そう言って、都絆菜ちゃんは病室を飛び出していった。
「都絆菜ちゃぁん…待ってぇ…」
結理恵ちゃんも後を追って出て行った。
「…だよね。やっぱりそうなるよね」
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは露希ちゃんだった。
「そりゃ泣くよね。友達がいなくなるんだもん。都絆菜ちゃんも、最後は半泣きだったしね」
「ほんと。…都絆菜も最後には素直になってくれて良かったー。…これで、わたしも安心して退院できる」
「え?露希ちゃん、退院するの?」
「あ、うん…。実は、14日にね」
「ほんとに!?でも、全治3ヶ月って…」
「うん、まぁね。全治はまだまだ先だけど、入院するのは2、3週間でいいんだって」
「なんだ…。…それにしても、チーコちゃんと同じ日になんて偶然だね。…てゆーかそれなら誕生日パーティーできないじゃない。実行委員なんか引き受けちゃって、どうする気だったのよ?」
「そう怒んないでよー。わたしだって最近知ったんだから」
「そっかぁ…。でも、チーコちゃんが出て行って、露希ちゃんまで出ていったら、寂しくなるね…。結理恵ちゃんも都絆菜ちゃんも寂しがるんじゃない?」
「結理恵は分かるけど、都絆菜はなー。どーだろね」
「寂しがるよー。さっきだって、目に涙を溜めてたし」
「あれは可愛かったよね。初めて都絆菜が素直になった瞬間だったよー」
「うんうん!あんな妹なら欲しー!」
「…って芹佳、妹いるじゃん…」
「それはそうなんだけどー。とにかく可愛いよね!」
「そうそう!わたし、写真撮っちゃった」
「え!?いつの間に!?」
「ほらっ!可愛いでしょー?」
「可愛い…けど!だめでしょ!こんなこと!」
「ぶー」
「露希ちゃん!芹佳ちゃん!」
「おや、希美花ちゃん」
懐かしい人…。
「どうなったの!?…?小3ちゃんは?」
「…行っちゃった」
「…そっか。そうよね。でも、無事に伝えられて良かったんじゃない?」
「無事にって…無事じゃない伝え方ってどんなもの?」
「…にしても、まだ4日しか経ってないのねー」
露希ちゃん、スルーされました!!
「なにが?」
「露希ちゃんが入院してからよ。まだ4日なのね。露希ちゃんが来てからなんだか病院は騒がしいわ」
「悪かったね」
「いじけないでよ。良い意味で言ったんだから!」
「どう言う意味?」
「結理恵ちゃんも都絆菜ちゃんも、露希ちゃんが来てからより一層楽しそうなの」
「…そうかなぁ」
「そうよ!だから、これでも感謝してるのよ?」
「えー、そうかなぁ?」
「希美花ちゃん、態度に出にくいからねー」
「えっ…芹佳ちゃんひどい! 昔の面影はいずこへ!?」
「ちょっ、希美花ちゃんでは!」
「いずことかウケんね。古―」
「いや、露希ちゃん、その感想はちょっと…」
「へ? あー希美花ちゃん、今日の牡丹餅は!?」
「また、それか」
「はい、持ってきたわよー」
「そんかい! いっただきまーす」
by WCK-News | 2012-04-14 00:00 | 知花さんの小説『想い出』

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