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想い出(10) 最終回 ~知花さんの小説

いよいよ、最終回です!

☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」
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「露希ちゃん、退院おめでとー」
芹佳が退院祝いにと小さな花束を持ってきた。
「ありがとー。あー、でもどうせなら食べ物がよかったな」
「言うと思った(笑)」
そう言って芹佳が思わず吹き出した瞬間。
「露希!」
威勢のいいというか元気な声が聞こえてきた。ん? ?誰? 声はすれども姿は見えず。
「ここだよ!」
声のする方へ体を向けるとそこにはあの生意気な少女が睨みつけるように立ってい
た。
「ん」
都絆菜が無愛想に小さな箱を押し付けてくる。
「なにこれ…?」
わけもわからずその箱を持て余し突っ立っていると、都絆菜は驚きの言葉を口にし
た。
「…退院祝いだよ」
変わらず都絆菜はふて腐れたようにそっぽを向いている。
「え!」
…渡す相手間違ってない?
「一応だよ? 別に露希のこと好きじゃなかったけど、一応入院仲間だし…。これだっ
てチーコの退院祝い買うついでに買ったんだからね! 一番安いヤツだよ!」
「さいでっか…」
はいこれ、いつもの都絆菜だ。全く可愛げないな。いや、都絆菜らしいけど。
「都絆菜ちゃん、嘘はだめだよ? ☆」
とそこへかわいい笑顔をした結理恵が現れた。ところで嘘ってなんのことだろ?
「あのねー、露希お姉ちゃん。都絆菜ちゃん、こんなこと言ってるけどほんとは結構
悩んでたんだよー。なに買うか」
「ゆ、結理恵! なに馬鹿なこと…!」
慌てふためき、必死になって結理恵を黙らせようとする都絆菜。
「しかも全然安くないしね。それ、二番目に高いヤツなんだよ」
「へぇー」
都絆菜ってば可愛いとこあるじゃん。これは今後からかいたくなるなぁ。
「そ、そんなことないよ。だってあたし、露希が退院して嬉しいし。今だってめちゃ
くちゃ清々してるもん! …だから、露希はチーコのおまけなの!」
えっ。最終的におまけ扱いですか、わたしは。そんな風に思われてたのか…。
「はいはい」
あんまり突っ込むとまたふて腐れるからと、ここは大人の威厳(笑)で軽く流す。
「ほんとにおまけなんだからねっ!」
そう言い捨て、すぐに都絆菜は退散した。…ほんと都絆菜って面白いなぁ。






「てか、二人ともどうして入院してるの?」
それからわたし達(わたしと芹佳。結理恵はチーコと話す約束があると言って戻った)
は病院の交流スペースでお喋りをすることにした。ここは病人なら誰でも利用可能
で、知人のお見舞いに来た人なんかともたまに会話してたりするの。あの後そろそろ
帰ろうかって話にもなったけど、もうすぐこの病院も見納めだということで(まだリ
ハビリはあるけど)、ちょこっとお喋りタイムなのだ!
「その質問には露希先生が答えてしんぜよう!」
眼鏡はないけど気分はすっかり知的な女教師♪
「よろしくお願いしまーす、露希センセー」
先生!? そう呼ばれちゃ気張らないわけにはいかないな!
「まず結理恵が高熱を出し、この病院に入院します」
「ふむふむ」
「翌日になってそれを知った都絆菜。お見舞いに参上すべく病院へと急ぎます」
「ふんふん」
「入院した結理恵に会うと彼女からしばらく学校を休むと聞きました。まぁ、当然で
すわな。入院しといて学校に行く術もない。さて、そこで都絆菜が驚きの行動に出ま
した」
「ほうほう」
「なんと! 自分も入院すると言い出したのです! 驚く結理恵の両親、慌てて止めま
す。『いかんいかん、君は学校へ行きなさい』。医者も言います。『入院するなら怪
我しないとだめだよ』。それを聞いた飛来都絆菜、ならば怪我をしようと階段から飛
び降りました。けれど残念ながらただの打撲、入院には至りませんでした」
「ほむほむ」
「どうすれば怪我…即入院できるか。それを自宅のベッドに寝転がって考えておりま
すと、なんとなんと、ベッドから転げ落ちてしまいました」
「うわ、痛ー…」
「泣きたいのをグッと堪えて病院に来ると、『入院しなさい』。これで晴れて飛来都
絆菜は入院することとなったのでした、めでたしめでたし」
「こんなこと言っちゃなんだけど…面白いね…」
「あ、それわたしも思った」
「てか露希ちゃ…センセー、詳しい! よく知ってるね?」
「ふふん、結理恵とかその両親から聞いたのさ! 面白い話はこの露希ちゃん、見逃し
ませんよー」
「さすが!」
お見それしました、というように目を細めて芹佳がぱらぱら拍手をした。



「露希ちゃ~ん!」
そこへ結理恵ちゃんと初めましての女の子が50mほど先で手を振りながら駆け寄って
きた。
「チーコに結理恵! どしたの?」
露希ちゃん直々の紹介はなかったけれど、とりあえずわたしはチーコちゃんの顔を頭
の中にインプットする。
「露希ちゃんも退院するって聞いたよ! おめでとう!」
頬を真っ赤にさせて嬉しそうに微笑むチーコちゃん。元気でおてんばそうな印象だ。
「へへ、ありがとう。チーコもだよね?」
そう言って露希ちゃんはチーコちゃんの頭を優しく撫でる。
「露希お姉ちゃん。都絆菜ちゃんからの退院祝い、もう開けた?」
「まだ。家でゆっくり見ようと思って」
「今開けてよ! ちーちゃんもさっき開けたんだけど、都絆菜ちゃんからのメッセージ
があったんだよ!」
「そうなの? ちょっとそれ見せてー」
「うん! はい、これ!」
露希ちゃんもわたしも、その手紙を覗き込むようにして見つめた。

チーコへ

退院おめでとう。あたしより先ってのがちょっとムカつくけど、よかったね。でもこ
れからもあたしと結理恵に会いに来てよ? 別にあたしは会いたいなんて思ってないけ
ど、チーコが来なかったら結理恵が寂しがると思うから。そんだけ。あと、ファイ
ト!

飛来都絆菜


「なんというか…都絆菜らしいね」
数秒の間を置き、わたし、露希は一言そう言った。
「でしょー?」
それを褒め言葉と受け取ったのか、結理恵は微笑みを絶やさないでいる。
「露希お姉ちゃんにはなんて書いたのか知りたいの! ねっ、だから開けて?」
「いいけど…大したもんは入ってないと思うよ?」
「いいからいいから♪!」
急かされながら、包みを破き箱を開ける。中からはおいしそうなクッキーの詰め合わ
せが顔を出す。そして、そこに一枚の小さなメモ。
「あ! やっぱりあった!」
はしゃいだ声で結理恵が叫ぶ。
「読んで~!」
芹佳まで子供みたいに楽しそうだ。
「よーし。都絆菜がなにを書いたのか、読んでやろうじゃん!」
と意気込んでメモを見たはいいものの、そこにはたった一言しか書かれていなかっ
た。


『バーカ!』


一言というより一語? いや、一単語? あ、どっちも同じ意味か。
「都絆菜め~。ムッカつく~~~!!!」
「あ、れ? 裏になにか書いてあるよ?」
芹佳に言われて紙を裏返す。


『頑張れ!』


「…都絆菜…」
ほんの一言だったけど、小さな一言だったけど、心の底にじんときたよ。都絆菜はか
なり意地っ張りで素直しゃないけど、ほんとはちゃんと優しい子なんだって、わたし
は知ってる。

都絆菜も頑張れよ!

そう思いながら、わたしはお祝いのクッキーをひとかじりした。


「いや~! 娑婆の空気は澄んでますねぇ~」
いろんな人に退院を祝福されながら、病院をあとにしたわたし。もちろんこの台詞は
冗談だけど、なんだかちょっと晴れやかな気分。
「娑婆…」
「って! そこは、違うだろ~! とか言ってつっこんでよ! わたし達が目指してんのは
こんなもんじゃないんだからね!?」
ん? 一瞬なにも考えず露希ちゃんの言葉を受け入れようとしたが、一息置いて首を捻
る。
「まぁわたしも芸人目指してるわけじゃないけどねー」
「あ、そ…。てか露希ちゃん、いつまでついてくるの?」
「へ?」
「いや、『へ?』じゃなくて。もうすぐわたしの家なんだけど?」
「ああ、うん、そだね」
「反応薄っ!」
「? だって今から芹佳の家に行くんでしょ?」
あっけらかんといった様子で露希ちゃんはわたしの言葉を不思議そうに聞く。
「はい!?」
なにそれなにそれ! いつの間にそんなの決まったの!?
「わたしのものはわたしのもの。芹佳のものもわたしのものーみたいな(笑)?」
「…ジャイアンか!」
とまぁこんな感じでなんでもない会話を重ねながら、結局露希ちゃんはわたしの家ま
でやって来た。
「あ~! 露希ちゃん!」
「うわ、芹乃、久しぶり! えーと…10話ぶり?」
「いや、1話から出てないから9話ぶりなんじゃない?」
「あー! 頭痛くなってきた! 1話以来出てない! でいーじゃん!」
「もうめんどいからそういうことにする(笑)」
「ところでお姉ちゃん、病院に行ってたの?」
「そだよ。あ、チーコちゃんも無事退院したよ~ 」
「え~! 明日じゃなかったの!? うわー、どうしよ! ちゃんと退院祝いも買ってたの
にー!」
「じゃー明日行けば?」
明日チーコちゃんが病院にいるかの確証がないまま、露希ちゃんはあしらうようにそ
う提案する。
「てか芹乃、なんでチーコのこと知ってんの?」
「え? だってたまに病院行ってたもん」
「嘘ぉ? わたし、見たことないけど」
「だってバレないようにしてたもん」
「どうして?」
「面白いから」
芹佳と芹乃、二人は姉妹で声を揃えてぬけぬけとそう言った。
「…」
ちょっとした敗北感を味わった。



さてさて遅くなりましたが、最後の言葉を。

コホン。
わたくし尚咲露希、無事退院致しました。それと一緒にチーコも退院。めでたい
ねー。都絆菜&結理恵はちょっぴり寂しそうだったけど。
でも案外結果オーライかも! なんと、結理恵達のところに芹乃が遊びに来るように
なったんだ。わたしから隠れるために今まではあんまり行けてなかった分、最近は
しょっちゅう遊びに行ってるんだって。悪戯っ子が4人に増えたって希美花ちゃんが
笑いながら言ってた。小3軍団はメンバーが増えて今尚健在だよ!
チーコも毎月の定期検診には顔を出すから、みんな揃って会えるし。『小3軍団』っ
ていう呼び名も、いつしか『小4ガール』ってのに変わっていたり。
さてそんなわたしも今日、定期検診のため一月ぶりに病院を訪れた。ドタバタいつも
の騒がしい声が病院中に響き渡る。久々にみんなでわいわい笑い声を挙げる。混ざり
たいのをぐっと堪えて(だってわたしはもう中学生だもん!)、おてんばな女の子達を
見守る希美花ちゃんに声を掛ける。
「こんにちはー。あはは、今日も小4ガールは元気だね」



2009.4.14
完。
by WCK-News | 2013-08-06 00:00 | 知花さんの小説『想い出』

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