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牡丹

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右の花弁に二つ星のてんとう虫がとまってます。
面白くてスマホでパチリ。
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by WCK-News | 2012-04-30 00:00 | 日々雑感
妄想世界

名誉も栄光も経歴も過去も全部取っ払って、丸裸のわたし。こんなわたしになんの価値があると言うのですか?  どうしてあなたはそんなにわたしに優しくしてくれるのですか?  暖かさを知らないわたしは過剰に怯えてばかり。泣いて泣いて傷付けて泣いて、ああ終わらない。なんて嘆かわしい。

今 わたしにはなにもない。開いた手の平からサラサラこぼれ落ちてく真っ白い砂は、まるでそれを象徴しているかのようで…。


叶わないから 現実だから 不可能な世界 すべて嘘だから…
やだ そんな言葉でわたしを突き落とさないで。夢を見させて。今が春じゃないのなら、青い春でないのなら、私達はいつ思い描けばいいのですか?  幼き日に刻んだ夢を、誰に向かって語ることができるのですか…?


もしも未来が変えられるなら。定められた運命でなく 『わたし』を生きられるのなら。

たとえば明日世界が終わったら。仮にあの子になれるのなら。もしかわたしが死ぬのなら…

有り得ないようなことばかり妄想する世界。変わらない。終わらない。妄想世界は続いてく。
いずれわたしがいなくなっても生き絶えても、同じ思想の子孫が必ず現れる。せめて彼女達だけは笑ってられますように。絶望世界に打ちひしがれ、わたしのように自ら死を選ぶようなことだけは避けられますように。


どうか…誰か いつか幸せになれ。


さらさらさら…砂が手の平から流れてく。止まる気配もなくこぼれてく。その中にいるやもしれぬ後世の『わたし』に伝えます。

苦しみばかりのこの世界に いずれ打ち勝てと。戦え。血を流して奪い取れ。涙流して失えと。わたしは信じている。負けない。負けられない。譲れないものがあるから、絶対に強くなる。彼らは生き抜いてみせる!!


ああ これが地獄の妄想世界。
ひらひらはらはら 花びら蝶が舞うように。永続します 絶望世界。次々生まれ来る哀れな子供達。誰かがこの世界を終わらせてくれないかしら?  爆弾でも薬品でも…なんでもいい、今すぐ滅びろ。死んでくれ。


もう繰り返したくはない。この餓鬼達を。わたしはりんね。巡り苦しむ人々を輪に乗せ再びその世界へ送り込む地獄の番人。
いつまで続くのかなぁ こんな人生。未だ償えぬ過去に犯した深き大罪。これは本当に厳しい罰だ。早くわたしを殺して下さい。誰か幸せ掴んで下さい。この世界で笑顔を 永遠の花を咲かせてみせて…。


ふ…あはははは!
もう 死にたいよ…。

死んだはず 終わったはずの地獄の番人は、今尚崩壊した心を痛めながらわたし達をここに送り出している。彼女の意志に報いるためにも。今のわたし達にはなにができる?  What can we do now...?


バイバイ…


そうとは知らず、一人の少女が再びりんねと成り果てる。りんねの犯した大罪。自殺という許され難い行為は日々行われ、地獄の番人は消えることなく続いてく。
涙すら流せぬその世界で りんねはなにを願うのか…。


せめてわたし達だけは幸せに。笑顔でいようと思うのです。きっとそれが、数百数千年前の彼女が望んだささやかな願い。
分かるよね? 今のわたし達も、ただそれだけを求めて欲しているのだから。


『幸せに なりたかったよ…
誰か 幸せになって…』
今日も世界は終わらない。誰か聞こえるだろうか。彼女達の悲しみの嘆きと懺悔の声が。もし聞こえたのなら、天に向かって目一杯微笑んであげて下さい。そして、心からこの言葉を叫んで下さい。

『わたしは 幸せだよ!』
少なからず、あなたのその声に救われる魂があるのです。かく言う私もその世界から生まれ出て来ました。きっとどこかの誰かに救われた…。
そうやってこの地獄も少しずつ幸せを育んでいっているのです。小さき花にも実は実る。漆黒 暗黒の世界にも一筋の光。生まれてきてくれて ありがとう。


今やっと そう言うことができました。



THE END.
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by WCK-News | 2012-04-29 21:05 | 知花さんのエッセイ『心の音』
楽園

死にたい…。


呟いた一言が、ぽたり雨になって流れ出した。
なにがいけないの? どうしてこうなるの? ぶつけられない怒りが収まらない。もう嫌だ。生きるのなんてもう嫌だ。人に会うたび傷付いて、誰にも会えずに傷付いて、胸の痛みが消え果てない。
もう解放して。その手から抜け出したい。それすら許されないのならば…

ねぇ、死ぬしかないでしょ?

悪魔がわたしに囁いた。これは天使? 楽になっていいという神様の御慈悲?
クスクス笑うその様はとても天使には見えない。
見たことのない無情の笑み。心ここにあらずの冷たい瞳。一目で分かった。ああ、この子は悪魔なんだな と。ただ人を傷付けにやってくるその非道且つ邪悪な存在は、わたしよりも遥かに幸せそうに笑っていた。なにより人を貶めることの快感を得るたび、そしてそれを自慢げにわたしに語るたびに彼または彼女の冷たすぎる青い瞳は瞬きを繰り返し幸せを表現していた。


わたしはなにも言わずに悪魔の言葉に耳を傾けていた。やがて悪魔の長い長い自慢話も終わりを迎えすべてが尽きるとそこは沈黙を貫くようになった。なにかネタを探す悪魔と無関心なわたしの心。どこか滑稽に思えてしまうのはやはりわたしが壊れてしまっているせいだろうか。

わたし達は、違っているようで似ているのかもね…。
ふとそう思った。


ああ、けどもうそんなことも…
今となってはどうでもいい。


わたしはなにも見なかった。こんな汚れた世界はお断りだというようにじっと目を閉じそこに在り続けた。
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by WCK-News | 2012-04-29 00:03 | 知花さんのエッセイ『心の音』
孤独色

向こうにはどんな世界が広がってるんだろう…。分からない。分からない。ワカラナイ…。

世界の色は、孤独色。わたしの色は、ただただ孤独を感じさせて…。
孤独を抱く女は、いまでたっても孤独だ。依然と、あるがままを見ることができず、小さな世界に在り続ける。この世で最も悲しい存在だ。なにが彼女をそうさせたのか。運命ですら彼女を拒んだ。彼女が愛するモノは、枯れ、腐り、そして朽ちる。片隅にひっそり咲く存在感の薄めな薔薇を手に取っても、それはすぐに見慣れた色へと変わる。

ほら…ね?
一寸と保たず褪せていくんだ…。渋い色に変わる原型崩れる浅はかな薔薇。
殊勝なわたしは重なるこの苦しい現実に耐えられぬ。不動の痛みを生む棘ですら彼女との接触を頑なに拒んだ。


「嘘吐き」
結局彼女は変われなかった。その悲しい色に彩られた闇を受け入れることができなかったのだ。

「わたしの声は、届かない」
真実はいつだって届かないもので、それが世間での唯一の真実。
「ほら…孤独の色が見える。あなたもわたしと同じなの? 聞こえるよ。誰に盗られてしまったの? …逃げないで。…ねぇ。その薔薇、綺麗な朱色ね。どうしてそんな風に保ってられるの? 羨ましい。狂おしい。…もうすぐあなたも堕ちるはず。絶望の果てに訪れる悲しき血色の最期のように。この手に握る薔薇のように。儚い夢が、じきに醒める。…さよなら。私達、きっとまた会えるわね」
…絶望に堕ちた者同士。私達は歪んだだ同志。否定され続けた悪しき魂。それは、いつでも惹かれ合うから。いつの時代でも。


…孤独色って知ってる? この世の真実。世界を赤黒く染める、切なく侘(わび)しい世界で一番拒まれる色なのよ。
そこは、終わりの世界。すべてに嫌われ、拒まれた人々が集う場所。終わりを迎えた人々が集まる場所。されど、その場所が終わることは絶対に有り得ない…。

THE END.
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by WCK-News | 2012-04-29 00:02 | 知花さんのエッセイ『心の音』
Anniversary

あのね、今日ね、すっごくいいことあったんだ!
頬を赤く染め全速力で走り切れた息を整えながら子供は、必死に話し出す。「ねぇ聞いてよ。それでね、あとね」急いでよく回らない呂律に悩まされながら喋ろうとするこの子の姿がかわいくて、「落ち着いて」と言おうと思ったけれど真剣に大きく口を開けて、外での楽しい出来事を微笑みながら聞いてしまいました。
遠足で○○ちゃんとおっきな滑り台で遊んだの。蝉の抜け殻見つけたんだ。拾った落ち葉で焼き芋したい! いとこのお姉ちゃんと雪だるま作ってきたよ。来年は雪合戦もしたいな♪
先生に褒められたテストでいい点とった。でも昨日怖い夢見ちゃったんだ…。
怯えて泣きべそかいて見上げる私の顔。遠い昔の自分を思い起こしながら私は彼女に囁いた。
「大丈夫…お母さんがいるから、安心してゆっくりお休みなさい」


転んだひざ小僧さんが泣いてるよ。痛いの痛いの飛んでけ~! って声掛けた。そしたらちょっぴり元気になった。そうだママ見て!  ほらお口の奥のお箸持つ方!  学校で歯が抜けたんだよ!  先生がおめでとうって言ってこの袋にいれてくれたの!

この子が泣かずに過ごせればいいのに。二度と苦しまなくてもいい安心できる明日ならいいのに。他の子はどうなったって構わないから、この子だけは不幸に苛まれなければいいのに…。
これからこの子の将来には一体どんな人生が待ち受けているのでしょう。泣き虫なこの子が泣かずに過ごせる未来は果たして存在するのでしょうか。広がる笑顔を隠さなくてもいいのでしょうか。私も共に笑っていていいのでしょうか…。

…お母さん?
ほら、あの子が泣いてます。不安がるあなたの心情を察知し心配そうにあなたの涙を見つめています。
泣かないで。声にならない声で子供が涙を堪えて水滴を拭き取っていきます。代わりにわたしが苦しむから。僕が一緒に泣いてあげるから。
ありがとう、伝えなくちゃならないね。ここまで成長してくれたかわいい我が子へ。今まで何一つ障害がなかったわけではないけれど、それでも幼いながらに悩み苦しんで立ち上がり生き抜いたこの愛らしい子へ。


おかえり、ただいま、行ってきます。
行ってらっしゃい、希望の光。私達の新たな未来。生まれ来る無垢な命へ おめでとう ありがとう 綺麗な言葉をその手に篭めて。
生まれてきてくれて、ありがとうー…。
そしてわたしを一番に抱いてくれたお母さん、いっぱい頑張ってくれてありがとう。これからたくさん迷惑かけます。時には背負わなくていい苦労を身に覚えのない迷惑を被ることもあるでしょう。わたしが成長してもまだまだ不安は健在でしょう。この小さかった身体はいつの間にかこんなに大きくなりました。


たった一つの奇跡と運命。確実な軌跡はいつか四季彩の人生を存分に色付かせるでしょう。涙を殺して見上げた夜空も、声を潜めて壊れた時計にした相談もいつかのための幸せの貯金。
花粉に苦しみ強がる秋も、寒さに震えて負けそうな冬も、もう大丈夫。春になったら桜が咲いて桃色の甘い香りが私達に微笑むでしょう。夏になったら海にキャンプにスイカに花火。いっぱいいっぱい遊ぼうね。夏休み明け、誰よりも眩しく日焼けの跡が映えるように。始まったばかりの人生には、たくさんの目映い想い出が待ち受けているから。そして決して簡単ではない困難を進む毎に、目まぐるしい明るい変化と輝かしい笑顔の両方が洞窟のあちこちに鏤(ちりば)められているはずだから。
今日は記念日。あなたが生まれた記念すべき麗しい日。あと何度このおめでたい生誕の日に立ち会えるかな?  大きくなったら家族のことなんかそっちのけ、友達との約束事に忙しくて私達のことは忘れちゃうかな? 忘れないでね。いつでもあなたが一番だよ。いつだってあなたが大好き。おめでとう。将来の分も含めて今日はいっぱい祝いたい。数え切れない“愛してる”を笑顔に変えて。幸福の鐘が鳴る。祝福を歌う音に跳ねる小鳥の鮮やかなダンス。ベビーカーの中からでも元気よく鳥に反応し楽しそうに笑いはしゃぐ姿を見ているうちに、生まれてきてよかった と思わず感謝していたら、ふいに家族への想いが溢れてきました。



THE END.
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by WCK-News | 2012-04-29 00:01 | 知花さんのエッセイ『心の音』
☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」

Happy Birthday

私にとってなんでもないこの日が、君にとっては特別な日かもしれない。
これは、そんな君に捧げる愛の詩集ですー。

おめでとう。君の出生を、君が無事に生まれることを望んだ人が、どれほどいることでしょう。君に出会えたことを喜ぶ人がどれほどいることでしょう。

こんな広い世の中で君に逢えたこと。それこそ奇跡。

でも、君だけじゃないね。人口の数だけそんな奇跡がある。

おめでとう。君が生まれてくれたこと、心から祝福します。そして、感謝します。君をこの世に連れて来てくれたお二人に。
ありがとう。幸せです。

君と私も、いつか出会えたらいいね。

Happy birthday!


また出逢いましょうね。


今日が良い日になりますように。
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by WCK-News | 2012-04-29 00:00 | 知花さんのエッセイ『心の音』

ニュースレター第62号

WCKニュース第62号を発行しました!
今号の内容紹介です。

☆ CONTENTS ☆
■ 巻頭エッセイ/スタッフ
■ 寄稿:外国人女性支援からの視点/2011年度APT代表
■ 特集:東日本大震災・東北被災地支援を考える/福岡ともみ
■ 報告:「依存症家族支援プログラム担当者全国研修」に参加して
                            /友杉明日香
■ 連載:“ポスト”フェミニズム理論の迷宮を歩く(31)
       近代社会と〔ヘテロ〕セクシズム/大槻有紀子
■ WCK公開講座へのお誘い/井上摩耶子
■ インフォメーション:講座案内 ほか

ご購読のお申し込み、お待ちしています!
※ニュースレターについてのご案内は、こちらをご覧下さい。

お申し込み・お問い合わせはウィメンズカウンセリング京都(WCK)まで。
TEL : 075-222-2133    FAX : 075-222-1822
E-mail: info@w-c-k.org  HP : http://www.w-c-k.org/
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by WCK-News | 2012-04-16 00:00 | ニュースレター

4月 公開講座のご案内

女性と貧困
~ジェンダーの視点で、当事者目線で考える!

ジェンダーの視点から、また女性当事者として、
3人のシンポジストに徹底的に語っていただきましょう。
赤石千衣子さんには、東京での「反貧困ネットワーク」と「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の活動を踏まえて、伊田久美子さんには、真正面から「ジェンダーの視点による女性労働問題」を、丸山里美さんには、可視化されにくい「女性ホームレス問題」について話していただきます。
2人の男性コメンテーターを交えての率直な討論にも、ご期待ください。

2012 年4月15日(日)1:30~4:30

★ シンジスト   
 赤石 千衣子(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事、
反貧困ネットワーク副代表、東日本大震災女性支援ネットワーク代表)
 伊田 久美子(大阪府立大学教員、女性学研究センター長) 
 丸山 里美 (立命館大学教員、女のおしゃべり会)

★ コメンテーター 
 舟木  浩 (弁護士)
 矢吹  文敏(日本生活自立センター)

★ コーディネーター
 井上 摩耶子(ウィメンズカウンセリング京都)

■ 参加費:500円
■ 資料代:1,000円(資料なしでも参加は可能です)
■ 会 場:ウィングス京都 2階セミナー室AB     
    ・地下鉄四条駅・阪急烏丸駅(20 番出口)
・地下鉄烏丸御池駅(5 番出口)いずれも徒歩5 分
              ※駐車場はございません。公共交通機関をご利用ください。
■ 共 催:反貧困ネットワーク京都

お問い合わせ⇒ ウィメンズカウンセリング京都
         〒602-8027 京都市上京区衣棚通下立売通下る東立売町203大京ビル2F
         TEL: 075-222-2133 FAX: 075-222-1822
                    受付時間 10:00~17:00(日祝除く)
       E-mail: info@w-c-k.org WebSite:http://w-c-k.org/

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チラシです。
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by WCK-News | 2012-04-15 00:00 | お知らせ(講座情報など)
「あ、それ。でもね、嘘ついても、どの道チーコちゃんは退院するでしょ? だったら嘘ついてもしょうがないじゃない。…ってことに、さっき気付いたのよ。」
「そーそー!わたしも、さっきそれに気付いたの。」
わ…忘れてた…。そっか。どんな嘘をついても、やっぱりチーコちゃんは退院しちゃうんだ…。
「…でも!本当のことを話すよりも、2人を傷付けない良い方法があるよ!きっと!ほら、例えば…」
結局、わたしはどうしたいんだろう。本当のことを言うべきなの? それとも、嘘をつく方がいいの?
「例えば?」
露希ちゃんと希美花ちゃんが声を揃えてわたしに訊ねる。
「えっと…あの…その…。」
「ほら~。だから言ったじゃん。見つからないでしょ?」
「…うん…」
「やっぱり、どんな時でも嘘はついちゃいけないんだよ。結局、正直が1番ってことだよね!」
ほんとにね。今日、それを思い知ったわたしでした…。

…でも、そんなに嘘っていけないことかな。だめなことかな。真実を話したら、相手が傷付くことが分かっているんだから、時には嘘をつくことも必要なんじゃないのかな。
わたしはそう思ったけれど、結理恵ちゃんに真実を話す気満々で、緊張して心の準備をしている2人にそんなことは言えなくて、その言葉は自分の胸にしまっておくことにしました…(あとでふと思ったんだけど、心の準備って聞く相手がするもんだよね…。間違えちゃった!)。



「あ! そう言えば!」
突然露希ちゃんが大声をあげた。
「なーに? 露希ちゃん。予告もなしに大声出さないでよ…。」
つい肩が震えちゃったじゃない。
「いや、予告ができるくらいなら大声とか出さないし…。」
たしかに。正論ですね。
「それもそうか…」
わたしが納得したことに、満足の笑みを浮かべる露希ちゃん。
「…って、そうじゃなくて!」
「じゃ、どうなの?」
「銅だよ!…だーかーらー! なにふざけてんだ、わたし~!」
…。今の露希ちゃん、なにがしたかったの? 『銅だよ!』ってなに? なんなの!? ギャグ!?どこかに笑うところがあったの!? …わたしは、今頃後悔しました。『どうなの?』なんて聞かなきゃよかった…。あああああ…。また話がズレていく…。
「それにしても、結理恵ちゃん、なかなか来ないわねー。」
希美花ちゃんの一言で、露希ちゃんは元に戻った。希美花ちゃん、感謝!
「そうそう。さっきからそのこと言おうと思ってたの。あのさ、さっき思い出したんだけど、結理恵、ここに来る気ないらしいよ?」
「ええ~!?」
「嘘~!!!!!」
わたしの言葉に2人(芹佳と希美花ちゃん)はパニック。
「な、な、な~!てことは、もうわたし達に愛想が尽きて、チーコちゃんのことを都絆菜ちゃんに話しに行っちゃったの~!?」
こっちは芹佳。
「それか待ちくたびれたとか!? どっちにしろ大変じゃない!急いで止めなきゃ!」
こっちは希美花ちゃん。
「馬鹿!なに言ってんの! 待ってよ!てか落ち着いてっ!」
え…?露希ちゃんの言葉を聞いて、わたしは正気に戻った。もちろん、『落ち着いて!』と言われて落ち着いたわけではない。いつもふざけている露希ちゃんが、今回は『餅ついて!』じゃなく、『落ち着いて!』と言ったからだ。嬉しい!露希ちゃんも、真面目に止めようと思ってくれたんだ! 感激~!
わたしは、その喜びで慌てるのをおさまれた。
「あ、間違えた。餅ついて!だった」
…所詮、露希ちゃんは露希ちゃんか…。落胆しました。
「それはそうと、結理恵、ここに来ないらしいよ?自分が来たら話し合いの邪魔になるから、わたし達が来るのを待ってるって言ってた。」
「露希ちゃんてば! それを早く言ってよ~」
「…じゃ、今から行く?」
「うん!いいね!そうしよう! 今すぐ行こう!」

「結理恵!」
「…露希お姉ちゃん…と、えと…芹佳さん?」
偉い! 結理恵ちゃん、わたしのこと、さん付けで呼んでる!さすが!ちなみに希美花ちゃんは、『仕事です!』と婦長さんに言われて仕方なく仕事に戻った。
「長い間待たせちゃったけど…今から話すよ。えーと…都絆菜は?都絆菜も呼んで来る?」
「うんっ。今、都絆菜ちゃん、おトイレに行ってるの。呼んで来るね!」
ほんと可愛いなぁ…。結理恵ちゃん。素直で、無邪気で…。

「お待たせ!呼んで来たよ!」
しばらくして、結理恵ちゃんが帰って来た。隣には都絆菜ちゃんもいる。けれど…ムスッとしている。
「どーしたのさー、都絆菜ー。そんな顔してたら幸せが飛んでっちゃうよー。」
「…あたし、露希、嫌いだもん。」
ああ…そっか。露希ちゃん、都絆菜ちゃんの意見に反対してるもんね。そして、都絆菜ちゃんは真相を知らないんだもんね。
「ねぇ、都絆菜ちゃん。ちょっと聞いて。露希ちゃんはね、都絆菜ちゃんにいじわるしてるんじゃないの。ちゃんとした理由(わけ)があるの。」
「理由?」
都絆菜ちゃんがびっくりして聞き返すと、露希ちゃんが一歩前に出て話し始めた。
「そうそう。単刀直入に言います! 結理恵はもう知ってるかもだけど、チーコは14日に退院するの。つまり、いなくなっちゃうの。」
「え…。14日?じゃあ…じゃあ、誕生月パーティーできないじゃん…」
俯く都絆菜ちゃん。結理恵ちゃんも、悲しそうだった。
「そっか…。だから露希、あたしの案に反対したんだ…」
「…うん」
「そっか。退院するんだ。寂しいな…」
「あのね、都絆菜ちゃん。たしかにチーコちゃんはいなくなっちゃうけど、それは嬉しいことなんだよ。悪いヤツをやっつけたんだから!」
「…病気が治ったんでしょ?」
冷たい目で見る都絆菜ちゃん。
「…はい、その通りです」
がーん。知ってるのかぁ。小学生も分かってるんだなぁ。…わたし、なんか恥かいた…?
「…そのくらい知ってるよ。あたし、もう子供じゃないんだからね」
…子供じゃない…か…。たしかにわたしも子供扱いされるのは嫌だった。
「やだよぉ…。ちーちゃんがいなくなるなんてやだよぉ」
泣き出す結理恵ちゃん。
「なにさ!結理恵、こんなので泣くなんて情けない! あたしは全然悲しくなんかないんだから!」
「…都絆菜。素直になんなよ」
露希ちゃんの一言で、都絆菜ちゃんの顔が歪んだ。泣くのを我慢している。
「露希の馬鹿っ!」
そう言って、都絆菜ちゃんは病室を飛び出していった。
「都絆菜ちゃぁん…待ってぇ…」
結理恵ちゃんも後を追って出て行った。
「…だよね。やっぱりそうなるよね」
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは露希ちゃんだった。
「そりゃ泣くよね。友達がいなくなるんだもん。都絆菜ちゃんも、最後は半泣きだったしね」
「ほんと。…都絆菜も最後には素直になってくれて良かったー。…これで、わたしも安心して退院できる」
「え?露希ちゃん、退院するの?」
「あ、うん…。実は、14日にね」
「ほんとに!?でも、全治3ヶ月って…」
「うん、まぁね。全治はまだまだ先だけど、入院するのは2、3週間でいいんだって」
「なんだ…。…それにしても、チーコちゃんと同じ日になんて偶然だね。…てゆーかそれなら誕生日パーティーできないじゃない。実行委員なんか引き受けちゃって、どうする気だったのよ?」
「そう怒んないでよー。わたしだって最近知ったんだから」
「そっかぁ…。でも、チーコちゃんが出て行って、露希ちゃんまで出ていったら、寂しくなるね…。結理恵ちゃんも都絆菜ちゃんも寂しがるんじゃない?」
「結理恵は分かるけど、都絆菜はなー。どーだろね」
「寂しがるよー。さっきだって、目に涙を溜めてたし」
「あれは可愛かったよね。初めて都絆菜が素直になった瞬間だったよー」
「うんうん!あんな妹なら欲しー!」
「…って芹佳、妹いるじゃん…」
「それはそうなんだけどー。とにかく可愛いよね!」
「そうそう!わたし、写真撮っちゃった」
「え!?いつの間に!?」
「ほらっ!可愛いでしょー?」
「可愛い…けど!だめでしょ!こんなこと!」
「ぶー」
「露希ちゃん!芹佳ちゃん!」
「おや、希美花ちゃん」
懐かしい人…。
「どうなったの!?…?小3ちゃんは?」
「…行っちゃった」
「…そっか。そうよね。でも、無事に伝えられて良かったんじゃない?」
「無事にって…無事じゃない伝え方ってどんなもの?」
「…にしても、まだ4日しか経ってないのねー」
露希ちゃん、スルーされました!!
「なにが?」
「露希ちゃんが入院してからよ。まだ4日なのね。露希ちゃんが来てからなんだか病院は騒がしいわ」
「悪かったね」
「いじけないでよ。良い意味で言ったんだから!」
「どう言う意味?」
「結理恵ちゃんも都絆菜ちゃんも、露希ちゃんが来てからより一層楽しそうなの」
「…そうかなぁ」
「そうよ!だから、これでも感謝してるのよ?」
「えー、そうかなぁ?」
「希美花ちゃん、態度に出にくいからねー」
「えっ…芹佳ちゃんひどい! 昔の面影はいずこへ!?」
「ちょっ、希美花ちゃんでは!」
「いずことかウケんね。古―」
「いや、露希ちゃん、その感想はちょっと…」
「へ? あー希美花ちゃん、今日の牡丹餅は!?」
「また、それか」
「はい、持ってきたわよー」
「そんかい! いっただきまーす」
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by WCK-News | 2012-04-14 00:00 | 知花さんの小説『想い出』
☆初めての方は、こちらもあわせてお読みくださいね。
⇒⇒⇒「上村知花さんの小説連載のご挨拶(井上摩耶子)」
⇒⇒⇒「上村知花さんのエッセイ連載のご挨拶(井上摩耶子)」

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翌日。
「おはよー。露希ちゃん!」
昨日のことなんてなかったかのように、明るくわたしに話しかける芹佳。わたしは驚いて言葉が出なかった。
「…どうしたの?」
芹佳が首を傾げる。「ううん。なんでもない。…おはよう。」
…芹佳って凄いなー。わたしは、今日芹佳に会ったら、なんて言おうか。どんな態度をとったらいいのか考えていたのに、芹佳はそんなこと考えずに水に流した感じで話しかけてきた。怒ってないの?…わたしにはとても出来ない。
「今日、学校はどうしたの?」
「やだな~。今日は土曜日だよ?学校は休みじゃん!」
「あ、そっか。」
…昨日、一晩中考えていた。明日、露希ちゃんにどんな調子で話しかけたらいいのか。いっそのこと、明日はお見舞いに行かないでおこうか。そんなことも考えたけれど、なんだかそれは卑怯な気がした。それに、結理恵ちゃんに話を聞かれてしまったのはわたしのせいなのに、喧嘩しただけで逃げ出すなんてことしたら、結理恵ちゃんに顔向け出来ない。そして考えた末、わたしは何事もなかったかのように話しかけることにした。わたしには、昨日のことを引きずって重い空気のまま会話を始めることなんて出来ない。昨日のことをなかったことにするなんて、ずるいことかもしれない。でも、わたしにはこの方法しかなかったの。
「露希ちゃ~ん。親御さんから預かったもの持って来たわよー。…って、あら、芹佳ちゃん。」
今日の希美花ちゃんが手に持っているのは、鞄だ。それも、露希ちゃんのお気に入りの大きな鞄。
「こんにちは。」
「芹佳ちゃんが来てるってことは…もしかして、もう仲直りしたの?良かったー!」
「…えと…一応…仲直り…しました。」
そうであって欲しいなーと思いながら答える。露希ちゃんが『仲直りなんてしてない!』と言わないように願いつつ。けれど、露希ちゃんはなにも言わなかった。
「そうなの?安心したわ。そうそう、露希ちゃん。はい、これ。」
その鞄はベッドの側にある椅子の上に置かれた。
「ありがとう!希美花ちゃん。」
露希ちゃんはとても嬉しそうだ。
「なにもらったの?」
そうわたしが訊ねると、
「えへへー。見て!」
露希ちゃんが鞄のチャックを開け、中から取り出したのは…漫画だった。
「…漫画~?」
拍子抜け。もっといいものが入っているのかと思っていたのに。がっかり…。
「…なんか不満げだね。」
「そりゃそうだよ。いいものを期待したのに、中身が漫画だったなんて。」
「悪かったね。わたしは漫画が好きなのよ!芹佳だって知ってるでしょ? なんならわたしのこと、漫画博士って呼んでくれてもいいから!」
漫画博士って…。露希ちゃん、やけくそですね…。
「それに、病院って暇なんだよ? ちょっと前までは結理恵や都絆菜が来ていたけど、結理恵は話し合いが終わるまで来ないつもりらしいし、都絆菜とは喧嘩しちゃってるから来ないし、唯一の話し相手である希美花ちゃんは、仕事が忙しいからなかなか遊びに来てくれないし。」
「そっか…。それはそうだね。ごめん。それに露希ちゃん、漫画大好きだもんね。漫画が友達と言ってもいいくらい!」
「そうそう!だから、わたしのこと漫画博士って呼んでもいいよ?」
…呼ばれたいの…? 露希ちゃん…。
「あ、で、でも、漫画より芹佳の方が大事だよ?芹佳はわたしの心友だし。漫画はただの友達。」
慌てて弁解する露希ちゃん。わたし、こんな露希ちゃんがけっこう好きなんだよね。露希ちゃんが慌てると、面白いの。
「分かってるよ。わたしも露希ちゃんのことは、大切な心友だと思ってる。」
「わ~い。嬉しい!」
今度は喜んだ。単純と言うか無邪気と言うか…。コロコロ表情が変わるなぁ。
「じゃ、一段落ついたところで、再び結理恵ちゃんについて話し合うとしますか!」
ナイスなタイミングで希美花ちゃんが口を挟む。
「そだね。わたしも、どうしたらいいか昨日ちょこっと考えたんだけど、いい案が浮かばなくてさー。芹佳。なんかいい案ない?」
露希ちゃんてば人任せだなー。でも、それってわたしのこと信じてくれてるってことだよね。だから、わたしの意見を聞こうとしてくれているんだよね。嬉しいな…。ありがとう。口に出しては言えないけど、感謝してる。
「…あんまり思い付かないなー。…いっそのこと、本当のことを話したらどう?小学生の頃は大抵みんな素直で、今が1番純粋な時期だから、嘘なんかついたら綺麗な心を汚してしまう。子供が純粋のまま育つかどうかは、小学生の時に決まる。それに、純粋な子供には嘘なんか通用しない。子供は、大人が思っているより大人で、大人は大人が思っているより子供。子供は子供なりに真実を求め、知ろうとしている。だから、真実を知っていることが多々ある。そんな大人な子供に嘘は通用しない。だから、嘘をつくより正直に真実を話した方がいい。…って、希美花ちゃんのお母さんが言ってたよ。」
さっきまでは真剣だった露希ちゃんの表情が、わたしの話が終わると同時に力が抜けて、いつものふにゃっとした顔に戻った(悪い意味で言ったんじゃないよ!? 悪気はないから!
分かりやすく解説しただけ!)。
「なんだ~。わたし、芹佳の考えかと思っちゃった!真面目な顔して言うんだもん。不安になっちゃったよ~。あ~、良かった。いつもの芹佳だ。」
露希ちゃんが安心したように、ほっと胸を撫で下ろす。
「露希ちゃんも、いつもの露希ちゃんだよ。」
露希ちゃんに真面目な顔は似合わない。わたしは、いつも通りふざけるのが好きだけど、温かい優しさを持っていて、相談に真剣にのってくれる露希ちゃんが好き。露希ちゃんに励まされると、なぜか安心するし、勇気が出る。わたしもいつか、露希ちゃんみたいに人から頼られるような人になりたいな。なれたらいいな。
「え~?いつものわたしってどんなの~?」
露希ちゃんが首を捻る。
「内緒っ。」
いつか教えるよ。わたしが、露希ちゃんみたいになれたら。そしたら、実は露希ちゃんに憧れていたって言おうかな。あの頃の露希ちゃんに救われていたって。
「芹佳ー! ギブする! だから教えてよー!!!」
必死な露希ちゃん。だけど、わたしに教える気はないよ。悪いけど。もう少し。あと何年か待って。そうしたら、きっと露希ちゃんにすべて話すよ。だから、露希ちゃんも今のままでいてね。変わらないでね。ふざけることが日課だけど、相談(聞く専門)上手な露希ちゃんのままでいてね。わたしが大人になってからも、きっとまだまだ露希ちゃんに相談に乗って欲しいことがあるはずだから…その時はよろしくね。露希ちゃん。
「…そろそろ話し合いに戻っていいかな?」
希美花ちゃんだ。彼女の言葉で、はっと我に返った。希美花ちゃんがいたの忘れてた…。わたし達、いつものように、2人だけしかいないかのように話してしまっていた。
「…でも、良かったわね。」
希美花ちゃんが微笑んで言う。
「なにが?」
「だって、昨日は大喧嘩をしていたのに、1日経っただけで、もう仲直り。心友には『ごめん』なんて言葉いらないのね。」
…てゆーかわたしが喧嘩をなかったことにしちゃったからなー…。
「そうなの!わたし達くらいいつも一緒にいると、相手の考えてること分かるの!」
それには同意出来る。わたしにも、なんとなく露希ちゃんの考えてることが分かるし。ちょこっとだけね。
「…ってなわけで、今回の話し合いは終了~☆」
突然露希ちゃんが話し合いを終えてしまった。
「え、終了って? なに勝手なことしてんの! まだ話し合い終わってないよ!?」
「え?終わったんじゃないの? だって、みんな芹佳の意見に反対出来ないし。嘘をつくより本当のことを言った方がいいしね☆」
でも、これで決定にしちゃっていいの? 今回の話し合いって、わたしが意見を言っただけじゃん…。そんなの話し合いじゃないよ!!
「言われてみればそれもそうねぇ。よし!じゃ、芹佳ちゃんの意見を採用しましょう。決定ね!」
って、希美花ちゃんまで賛成なの!? しかも断定しないで~!
「うん! 決定! 決定!」
えっ…ちょっ…。
「ちょっと待ってよ!たしかにわたしの意見もいいと思うけど(さらっと自慢?)、他の考えもあるんじゃない?だって、チーコちゃんがもうすぐいなくなっちゃうなんて知ったら、きっと結理恵ちゃんも都絆菜ちゃんも傷付くだろうし…。」
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by WCK-News | 2012-04-11 00:00 | 知花さんの小説『想い出』

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